第三十九話 妖魔その十三
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「そう、何もかもを破壊し全てを濁流に飲み込む存在だ」
「それでなのか」
「この世界も文明も何もかもを破壊することこそが望みだ」
「そしてその混沌の中で生きるのか」
「それが妖魔であり邪神だ」
こう語るのだった。得体の知れぬ邪悪さをその身にまといだ。
「わかったな」
「理解はした」
牧村はまずはこう返した。
「しかしだ」
「しかしか」
「それを許しはしない」
「決してだな」
「俺には関係ないということは言わない」
牧村は個人主義的な面が強い。しかしここではそれは見せなかった。
「俺は人間だ。人間ならばだ」
「何だというのだ、それで」
「人間の世界を護る義務がある」
「だからか」
「貴様等を倒す」
はっきりとした宣戦布告であった。
「しっかりとな」
「そうか、わかった」
「いいな、それではだ」
彼はまだ髑髏天使になっていない。しかし剣は持っていた。その心にだ。
「貴様等を一人残らず倒す、今それを言う」
「面白い。幕開けとしては予想以上だ」
死神は彼の言葉を受けて。楽しげにわらってみせてきた。
「ここまで愉快な幕開けになるとはな」
「面白いか」
「そうだ、面白い」
ナイアーラトホテップは言葉を続ける。実際に楽しむ声でだ。
「こうしたものになるとはな」
「それでどうする」
牧村は邪神を見据えたまま問い返した。
「貴様は。今は」
「私がか」
「そうだ、戦うのか」
問うのはこのことだった。
「今ここで。貴様自身が」
「そうだな」
邪神はその問いにだ。まずは一呼吸置いたのだった。
そしてだ。話そうとする。しかしであった。
「止めておくのだな」
「貴様か」
「そうだ、私だ」
死神であった。既に戦う姿であった。右手にはあの大鎌がある。
「もう出て来るとは思わなかったがな」
「死神か」
「ナイアーラトホテップだな」
死神は彼の姿を見据えてその名を問うた。そうしながら牧村の横に来たのだった。
「そうだな」
「その通りだ」
「やはりな。姿は聞いたとおりだ」
その漆黒の白人の顔を見ての言葉だ。
「黒い邪神か」
「だがこれが私の真の姿ではないことも知っているな」
「如何にも」
死神は当然だと返した。
「既にな」
「なら話は早いな」
「貴様は邪神の中でも特別だ」
その漆黒の邪心を見ての言葉である。
「ならばだ」
「ならば、か」
「ここで消しておくか」
一歩前に出る。右足を出してみせた。
「いいか」
「二人になったか。だが」
「だが?」
「趣向としては面白いが今は止めておこう」
こう言ったのだった。
「今はだ」
「戦わないか」
「今は伝えるだけだ」
それだけだからだというのだ。
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