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髑髏天使
第三十九話 妖魔その十一

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「そういうものじゃ」
「魔物は腐っていないが人間は腐っているか」
「妖怪にもいるよ」
「魔物にもね」
 ここで妖怪達が言い加える。
「そういう奴はここにはいないけれどね」
「皆から嫌われるから」
「屑は嫌われるか」
「それが普通じゃ」
 博士はまた牧村に話す。
「人は職業や主義思想で決まらん」
「まずは性格だよね」
「それだよね」
 妖怪達がここでも話す。
「普通はそうだよね」
「それが違うのがおかしいんだよ」
「そうそう」
「そうじゃ。我が国のマスコミや知識人の世界はおかしい」
 博士の言葉はまたしても深刻な方にその振り子をやった。
「おかしいというレベルではない」
「俺はそういう世界にはいたくないものだな」
 牧村も声を険しいものにさせていた。
「どうもな」
「君にはわしの後継者になって欲しいのじゃがな」
「学者にか」
「考えておいてくれ」
 今はこう言うのに留めた。
「それもな」
「学者か」
「わしも歳じゃ」
 百歳を優に超えている。
「流石にもう何十年も生きられんじゃろ」
「っていうかそのまま妖怪になるんじゃ」
「だよね」6
 妖怪達はその博士を見ながらこう述べる。
「僕達の仲間にね」
「なるんじゃないかな」
「殆どそうなってるところもあるし」
「悪くないのう」
 博士もそれでいいというのだった。
「それも」
「じゃあその時はまたね」
「こうして楽しくやろうよ」
「そうしよう」
 こんな話もするのだった。
「これまで通り皆で仲良くね」
「飲んで食べて楽しくやって」
「そうしていこう」
「そして俺が学者になってか」
 牧村は博士の先程の言葉を受けたうえで話す。
「そうしてか」
「そうそう、それでどう?」
「牧村さんが大学院に入ってね」
「研究室を持ってさ」
「それで今まで通り」
「ふむ、よいな」
 博士もまんざらではなかった。
「ではわしはその横で楽しく過ごすと」
「妖怪になってね」
「これまで通りね」
 妖怪達にとってはだ。それはこれまでと全く変わらないことであった。
「それっていいよね」
「そうそう、かなりね」
「じゃあこれでいこうよ」
「決定にしよう」
「学者か」 
 牧村は自分でこのことを考えてみる。そうして言うのであった。
「どうもな。それもな」
「嫌とか?」
「駄目?」
「気に入らない?」
「あまり想像できないな」
 これが彼の今の言葉だった。
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