SAO編
四十三話 語らう(彼)
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キリトは、己の出来るはずもない罪滅ぼしのため、サチの人生をほんの少しだけでも良い。もとに戻す。その為だけに、そのアイテムを求めた。
しかし、所詮はゲームに設定されたアイテムである。その効果は、茅場晶彦の想定内の物でしかない。
確かに、蘇生アイテムは存在した。名称を《還魂の聖晶石》。
効果は、《対象プレイヤーのHPがゼロになってからアバターが消滅するまでの“約十秒”の間のみ蘇生が可能になる》即ち、過去に死亡したプレイヤーに対して、素晴らしき蘇生アイテムはその効力を持たなかった。
許されることの無い自身の罪が、どうあがいても償えない。自分の行動の何もかもが無意味だったと知った時、キリトは完全に絶望した。
償えない罪は、時として何者よりも冷酷に人の心を壊すのだ。
半ば自棄になり、自殺じみた所まで思考が墜ちていたキリトをギリギリで救ったのは、サチだった。
部屋を訪ねて来た彼女にキリトが「何も聞きたくない。もう消えるからほっといてほしい」と懇願している間、サチは黙ってキリトの話を聞いていた。しかしその言葉が、「意味なんて無かったんだ……全部……無意味だったんだ……」そう言った所で、キリトの頬をサチは大きな音と共にひっぱたいた。そうして、呆けているキリトに彼が知る限り初めて怒鳴った。
目に涙を浮かべながらも、本気で怒った顔で、大声でまくし立てるサチの迫力をキリトは今でも覚えている。
『そんなことない!私はキリトにいっぱい助けてもらった!キリトと出会えて……一緒に居られてよかったって思ってる!それを……それを全部、たった一回の失敗で全部何の意味も無かったみたいに言わないで!私とキリトが出会った事に、意味が無かったなんて言わないでよ!』
『でも……結局……』
『皆を死なせた!?そんなのキリト一人の責任じゃ無いよ!キリトに頼りすぎて注意が甘くなってるってケイタはあの頃言ってたのに、それに耳を貸さなかったのは皆だもの!』
『だけどそれでも!俺にはあの時皆を救う手段が合ったはずだ!俺が妙な自己保身にさえ走っていなきゃ、あの時皆の命は助かったんだ!!もう良いんだよ……何も無いんだ俺には……何も……』
『そんなの嘘!キリトは気づいてるよ、自分にもまだ残ってる物があるって事!それを全部意味無いなんて言って、価値も無いなんて言って、キリトは自分がしたことから逃げたいだけでしょう!?それで死んで終わった事にしようなんて、そんなの絶対間違ってる!』
そこまで言われた所で、ついにキリトもキレた。感情のリミッターが外れ、声が怒鳴り声になる。
『じゃあどうしろって言うんだよ!?俺にこのまま、意味も無く唯生きてるだけのバカみたいな役を続けろって言うのか!?』
が……
『そうだよ!!』
この一言で、
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