第三十八話 老婆その十七
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「もっとね」
「激しいか」
「まだはじまっていないけれどね。そんな気がするよ」
「そうか」
「その時には。死なないでね」
目玉の口調が変わってきていた。
「絶対にね」
「死ぬなか」
「そう、死んだら駄目だよ」
牧村を気遣う言葉だった。明らかにだ。
「何にもならないからね」
「生きてそれでか」
「最後まで戦え」
死神もここで言ってきた。
「いいな」
「最後までか」
「そうだ、戦え」
牧村にだ。告げた言葉だった。
「わかったな」
「話は聞いた。しかしだ」
「しかしだ」
「言われるまでもないことだ」
牧村もまた、であった。死神に対して告げたのである。
「俺は死なない」
「絶対にだね」
「そうだ、死なない」
こう断言してみせるのだった。
「何があろうともだ」
「そう。その言葉確かに聞いたよ」
目玉もその言葉を受けていた。
「今ね」
「死ぬことはない」
死神もこう言う。
「貴様はだ」
「これまでとは口調が変わったな」
「認識が変わったからだ」
死神はまた返してきた。
「貴様へのな」
「それでなのか」
「少し前の貴様は人間からなくなろうとしていた」
「魔物にか」
「そうなろうとしていた」
魔物にだというのだ。
「だが。それが変わった」
「人間でいるか」
「私はそれを見た」
やはり牧村を見ていた。その心でだ。
「しっかりとな」
「大阪に来てからずっとか」
「そうだ、見ていた」
また話してだ。そしてそのうえでだ。
目玉がだ。また言ってきた。
「君は人間だよ」
「最初からそのつもりだ」
「もう完全に人間だよ」
こう牧村に言うのである。
「揺らぐことはないだろうね」
「人間からか」
「うん、揺らがないよ」
「揺らぐつもりもない」
「そう思っていることが一番大きいんだよ」
そこを指摘するのだった。
「そういうことだよ」
「思うことがか」
「思うからこそ動くことができる」
今度は死神の言葉である。
「そういうことだ」
「思うことがか」
「最初は全てそこからはじまる」
「思い、それからか」
「そうだ、思うことだ」
そこを強調するのだった。
「わかったな」
「話は聞いた。思い、そこから動くか」
牧村もそれを話す。
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