暁 〜小説投稿サイト〜
SAO─戦士達の物語
SAO編
四十二話 語らう(彼女)
[5/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話

 越して来た初日に挨拶に来たリョウの母親と、境遇が近いせいか直ぐに意気投合したサチの母親はその事をリョウの母親にも話し、リョウの母親が駄目もとで老人夫婦に頼んでみると、夫婦は「子供が二人増える程度対して変わらない」と大胆にもこれを受諾。結局、老人夫婦の家には老人の孫+サチ+リョウ+リョウの姉と言う、四人の子供が預かられる事になった。

 正直な所、あの頃の事はごちゃごちゃとしていてよく覚えていない。
皆がお婆ちゃん(とはいっても年の割にに若かったが)と呼んでいた育ての母のような人と子供四人の生活。
子供四人にしては、案外と静かだった様に思う。しーちゃんと呼ばれていたお婆ちゃんの孫やリョウの姉はは殆ど悪さをしなかったし、サチも基本的におとなしい子供だったため怒られることは少なかった。
その二人に無かったやんちゃさを吸収したように暴れまわっていたのは、リョウだ。
基本的にはゲーム等をしているくせに、時々思い出したように悪戯をしたり外に出て行ったりする。
お婆ちゃんはけして甘い人間では無かったため、悪さをすれば即座に叱られるのだが、サチのおぼろげな記憶にある限り、確かリョウは懲りずに同じような事を繰り返していたように思う。

 唯、周囲に近い歳の女子二人と言う環境で育ったからか、それともお婆ちゃんや母親の教育の成果か、そんなリョウでも、基本的に自分より年下の人間や女子に手を出す事はしなかった。
 と言うか、むしろ女子に対しては優しかった事が多かったと思う。帰り道で野良犬が怖いと言えば追っ払ってくれたし。下級生をいじめるのが趣味だった性格の悪い五年生帰り道で絡まれた時は、三年生だったにもかかわらず体格差を砂やら石やら噛みつきまで使って覆して撃退し、自分はボロボロになりながらも怖くて泣いていたサチ怪我一つさせずにで手を引いてお婆ちゃんの家まで連れて帰ったし。転んで泣いていた時におぶわれた記憶すらある。SAOに来てからも…………
 いわばサチにとって、リョウは困った時に駆けつけてくれるヒーローのような存在だった。

 そう、結局は、そこである。
ずっと自分を守り、助けてくれた幼馴染にいつの間にか抱いていた思い。それが、サチの恋心の正体だ。
ありきたりではあり、自然発生とも言うべき、そんな普遍的な理由。
まだ届いてはいない。しかし……いつかは。

────

「……そっか」
 全て話し終わってから、アスナはため息を漏らすようにそう呟いた。サチはと言うと、改めて話して恥ずかしくなったらしい。
頬を染めて紅茶をちびちびと飲んでいる。
それを見たアスナは、自分の中で、一つの決意をする事にした。

「サチ」
「ん……うん……?」
 ゆっくりとサチが顔を上げる。まだ頬はうっすらと朱いが、だいぶ落ち着いたようだ。
その顔を見な
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ