SAO編
四十二話 語らう(彼女)
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!」
「えっと……つまらなかったかな?」
「う、ううん!そんな事無いよ!」
サチの呆けていた理由はそこでは無い。
むしろ逆。彼女の歩んだ道が余りにも真っ直ぐで、一途で、そして何より綺麗だったから、その物語の様な話の中に完全に意識が引き込まれてしまっていたのだ。
リョウがキリトとアスナの結婚を知った日に帰って来た時、嬉しそうにしていた気持ちも今ならば分かる。
アスナの話によれば、リョウはアスナとキリトの中間に立ち、二人の距離を縮めるための協力を、本当によくやって居たらしい。
今話を聞いた自分ですら、このハッピーエンドな物語の主役である二人を心から祝福したい気持ちでいっぱいなのだ。ずっとみて来たリョウはさぞかし感慨深く、そして嬉しかっただろう。
サチは今、心の底からキリトとアスナの結婚を喜んでいた。
しかし同時に、サチの中で少しだけ嫉妬と言う感情が芽生える。
サチは自分の人に旨く感情を伝えられない内行的な性格を、自分から公言する訳では無いもののある程度自覚している。故に、直球な手段を次々に打つ事の出来るアスナの行動力が、少しばかり羨ましかったからだ。
というか……
『そんなに他人のに気付けるなら自分のにも気づいてくれたって……』
そこである。まぁ、今思っても仕方のない事なのだが。
その後、ひとしきりの祝福の言葉をサチはアスナに送った。
アスナが少し涙目になりながらそれを受け取った後、今度は彼女の方から質問が投げかけられる。
「そう言えば、サチは?」
「え?何が?」
紅茶を飲み負けていた手を止め、サチはアスナの方を見る。
するとそこには、目に興味を爛々と輝かせる、一人の女子の姿があった。
サチは瞬間的に|身の危険を感じ取ったが、遅かった。
「サチがリョウを好きになった理由!」
「う……」
しまった。と、サチは直ぐに自分の失敗を悟る。この話はアスナの話が終わった時点で切り上げるべきだったのだ。アスナに話させた以上すぐに自分の番が回って切る事は分かっていたのに……迂闊だ。
しかし聞かれてしまった以上、此処で離さないのはフェアでは無い。
サチは若干……否、多大な小恥ずかしさを覚えながらも、ゆっくりと口を開いた。
────
サチとリョウが初対面をしたのは五歳時、リョウがサチの家だったアパートの隣の部屋に引っ越して来た時だ。
サチの父親はサチが三歳の頃に家から出て行っていたので、女手一人で自分を育ててくれていた母親の帰りは仕事で殆ど毎日遅かった。
アパートの住人には子供を預かるほど余裕のある人はいなかったため、サチはアパートの向かい、近所でも気の良いと評判の老人夫婦のもとで老人夫婦の孫と日中を過ごしていた。
そんなある日、リョウが引っ越してきた。
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