暁 〜小説投稿サイト〜
髑髏天使
第三十八話 老婆その十五
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話

 腰の曲がった老婆が来た。鼻が長くそれも曲がっている。黒い服を着た彼女が牧村と若奈の前に来た。そうしてそのうえでだった。
「ふむ」
 杖を右手に持ちながらだ。彼の顔を見てきた。
「御主か」
「何だ」
「中々よい顔をしておるな」
 こう言うのである。
「実にのう」
「そうですよね」
 若奈は老婆のその言葉を聞いてだ。素直に喜ぶだけだった。
「牧村君ってとても」
「伊達にあそこまでなった訳ではないな」
「そうか」
「うむ。それだけはある」
 こう牧村に言うのであった。
「御主はじゃ」
「俺はか」
「相手になるのに相応しい」
 これは若奈にはわからない言葉だった。老婆の今の言葉にきょとんとなった。
 そしてだ。思わず問うのだった。
「あの」
「何じゃ、娘さんよ」
 その歯が殆ど残っていない口での言葉だった。
「わしに何か用か?」
「相手っていいますと」
 そしてだ。よくわからないまま言う若奈だった。
「テニスですか?お婆さんもテニスをされるんですか?」
「テニスか」
「それともフェシングですか?」
 これも話に出すのだった。
「どっちですか?」
「どちらじゃと思う?」
「ええと、それは」
「どっちでもないと思っておるな」
「はあ」
「どちらでもない」
 老婆はまた言ってきた。
「そういうことじゃ」
「そういうことではないっていいますと」
「じゃがフェシングに近い」
 老婆はこう言い換えた。
「それにじゃ」
「近いんですか」
「左様、近いな」
 若奈にわかりやすく言ったのであろうか。こうも言ったのである。
「どちらかというとじゃ」
「そうですか」
「ううん、剣道じゃないですし」
 若奈はわからないまま考えていく。このことに察しがつかないのは彼女が髑髏天使を知らないからだ。それは仕方のないことであった。
「だったら薙刀ですか?」
「面白い娘さんじゃな」
「そう言えるのか」
「うむ。大切にすることじゃ」
 今度は、秋村への言葉だった。
「よいな」
「安心しろ。生きるのは俺だ」
「生きるのじゃな」
「生き残ってみせる」
 そしてだ。言う言葉はだ。
「人間としてな」
「よい言葉じゃ。そうするといい」
 ここまで話してであった。老婆は前に出た。そうして牧村と若奈の間を通り過ぎてだ。そのうえで杖も使いながら前に進むのであった。 
 その動きはだ。外見からは想像できないまでに速くだ。二人の後ろを進んでいく。
 その中でだ。老婆はまた二人に今度は後ろから言ってきた。
「さて」
「さて、か」
「楽しみじゃ」
 今度の言葉はこれであった。
「これからな」
「これから?」
「そうじゃ、これからじゃよ」
 若奈にも言う。彼女がわからない話なのを承
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ