第三十八話 老婆その十五
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腰の曲がった老婆が来た。鼻が長くそれも曲がっている。黒い服を着た彼女が牧村と若奈の前に来た。そうしてそのうえでだった。
「ふむ」
杖を右手に持ちながらだ。彼の顔を見てきた。
「御主か」
「何だ」
「中々よい顔をしておるな」
こう言うのである。
「実にのう」
「そうですよね」
若奈は老婆のその言葉を聞いてだ。素直に喜ぶだけだった。
「牧村君ってとても」
「伊達にあそこまでなった訳ではないな」
「そうか」
「うむ。それだけはある」
こう牧村に言うのであった。
「御主はじゃ」
「俺はか」
「相手になるのに相応しい」
これは若奈にはわからない言葉だった。老婆の今の言葉にきょとんとなった。
そしてだ。思わず問うのだった。
「あの」
「何じゃ、娘さんよ」
その歯が殆ど残っていない口での言葉だった。
「わしに何か用か?」
「相手っていいますと」
そしてだ。よくわからないまま言う若奈だった。
「テニスですか?お婆さんもテニスをされるんですか?」
「テニスか」
「それともフェシングですか?」
これも話に出すのだった。
「どっちですか?」
「どちらじゃと思う?」
「ええと、それは」
「どっちでもないと思っておるな」
「はあ」
「どちらでもない」
老婆はまた言ってきた。
「そういうことじゃ」
「そういうことではないっていいますと」
「じゃがフェシングに近い」
老婆はこう言い換えた。
「それにじゃ」
「近いんですか」
「左様、近いな」
若奈にわかりやすく言ったのであろうか。こうも言ったのである。
「どちらかというとじゃ」
「そうですか」
「ううん、剣道じゃないですし」
若奈はわからないまま考えていく。このことに察しがつかないのは彼女が髑髏天使を知らないからだ。それは仕方のないことであった。
「だったら薙刀ですか?」
「面白い娘さんじゃな」
「そう言えるのか」
「うむ。大切にすることじゃ」
今度は、秋村への言葉だった。
「よいな」
「安心しろ。生きるのは俺だ」
「生きるのじゃな」
「生き残ってみせる」
そしてだ。言う言葉はだ。
「人間としてな」
「よい言葉じゃ。そうするといい」
ここまで話してであった。老婆は前に出た。そうして牧村と若奈の間を通り過ぎてだ。そのうえで杖も使いながら前に進むのであった。
その動きはだ。外見からは想像できないまでに速くだ。二人の後ろを進んでいく。
その中でだ。老婆はまた二人に今度は後ろから言ってきた。
「さて」
「さて、か」
「楽しみじゃ」
今度の言葉はこれであった。
「これからな」
「これから?」
「そうじゃ、これからじゃよ」
若奈にも言う。彼女がわからない話なのを承
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