第三十八話 老婆その十四
[8]前話 [2]次話
「美味しいわね」
「そうだな。しかし」
「しかし?」
「和食も勉強するんだな」
牧村が今言うのはこのことだった。箸でその善哉を食べながらだ。
「それも」
「そうよ。欧風だけじゃなくてね」
「和食もか」
「中華街にもよく行くし」
そちらもだというのだった。
「中華街もね」
「そこもか」
「よく行くわよ。それで食べて勉強しているの」
「他の文化の料理もか」
「あれよ。欧風の中に和食を入れたりして」
若奈もその善哉を食べながら話す。
「そこから新しい料理が出来るのよ」
「店のメニューがか」
「そういうこと。和風のアイスクリームとかね」
「そういうものもか」
「出来るのよ。だからいいのよ」
にこりとしての言葉だった。
「こうしたお店に入るのも」
「そういうことか」
「意外な、そうね」
若奈は少し真面目な顔になって話す。
「思わぬものとの結合からいい味が生まれたりするのよ」
「成程な、それもまた勉強か」
「勿論普通に喫茶店も入るわ」
それもするという。
「けれどね。こうしたお店にも入ってね」
「勉強していくか」
「そういうこと。わかってくれたかしら」
「少しだが」
これが牧村の今の返答だった。
「わかった」
「わかってくれたら有り難いわ。だって」
「だってか」
「お父さんとお母さんにも宜しく言われてるし」
話がだ。また妙な方向に向かうのだった。
「それはね」
「このことはね」
「このこと?」
「そうよ。だって将来お店に入るんじゃない」
未久と同じ話になっていた。それも自然にだ。
「だからね。言われてるのよ」
「あの人達にもか」
「私三人姉妹の長女じゃない」
これはもう二人の間では言うまでもないことだった。
「そうよね」
「それはもう」
知っているとだ。牧村も返そうとした。しかしそれよりも先にだ。
「だったらわかるわよね」
「だから?」
「そう。だったらよ」
そしてだ。今言う言葉はだ。
「お婿さんを取らないといけないの」
「俺か」
「そう、牧村君はお婿さんになるのよ」
にこりとしてきていた。その顔がだ。
「わかったわね。だから余計にね」
「決まっているのか」
「大学卒業したらね」
リミットまで定められていた。彼が気付かないうちにだ。
「いいわよね、それで」
「いいがな」
「そういうことでね。じゃあね」
そんな話をしながら食べていた。そうしてだ。
店を出て石の小道を歩いているとだ。目の前からだ。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ