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髑髏天使
第三十八話 老婆その九

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「妖精神になります」
「そちらのか」
「はい、妖精神です」
「成程な。言い換えればそうなるか」
「はい、ですが我々は元々魔神でいいと思っています」
 魔神という呼び名で満足しているというのであった。
「それで」
「貴様等が妖精かどうかはまずはいい」
 牧村もそれはいいというのであった。
「だが」
「戦うならばですが」
「そうだ。遠慮も容赦もしない」
 そうだというのであった。
「これは言っておく」
「そうですね。では私から言うことはこれで終わりです」
「帰るのだな」
「ここはいい街ですから」
 笑みが変わった。楽しみを前にしているものにだ。
「色々と回っていきます」
「そうか。それではそうするといい」
「食べ物が特にです」
 彼が言うのもまたそれであった。やはり大阪は食の街だ。それは外せなかった。
「楽しみですので」
「食べることもまた楽しみだな」
「この世でもっとも尊い楽しみではないでしょうか」
 そうだというのであった。老人はだ。
「ですから。今から」
「貴様だけではないな」
「はい、他の魔神達もです」
 彼等もだというのである。
「無論です」
「そうか。全員でか」
「人の余波楽しいものです」
 こう言って笑いもしていた。
「では」
「また会うことになるな」
 こう話をしてだった。老人は姿を消した。牧村は暫く池の中や夜空の月を見上げていた。だがそれも見飽きたのか。暫くしてその庭から姿を消した。
 その次の日だった。街を歩いているとだ。横にいた若奈が声をかけてきた。
「ねえ」
「何だ」
「今からだけれどね」
 こう言ってきてからの言葉だった。
「お茶飲みに行かない?」
「お茶か」
「そう、お茶ね」
 彼の顔を見上げながらの言葉だった。
「今からね。どう?」
「そうだな」
 そして牧村もそれに頷いてでった。
 少し時間を置いてからだ。静かにいってきた。
「近くの喫茶店にだな」
「夫婦善哉にしましょう」
 若奈が言ってきた店はそこだった。あの法善寺横丁の店である。そこだというのである。
「あそこに行きましょう」
「今から難波にか」
「ええ、駄目かしら」
 やはり彼を見上げながらの言葉だった。
「今からね」
「そうだな」
「嫌だったらいいし」
 若奈の言葉は譲歩も入っていた。
「それならそれでね」
「別の場所か」
「そうするし。どう?」
「わかった」
 まずはこう述べた牧村だった。
「それならだ」
「ええ、それなら」
「行くか」
 返答はこれであった。
「今からな」
「夫婦善哉でいいのね」
「そこでいい。それに」
「それに?」
「前にも行った」
 このことも話すのだった。
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