第三十八話 老婆その八
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「ですが」
「ですがか」
「はい、しかし魔物には多くの命があります」
こう言うのである。
「そう、幾つもです」
「九つの命だともいうのか」
「ははは、御存知でしたか」
牧村の今の言葉を聞いて笑って述べてみせてきた。
「我々魔神は不死身ですが魔物は九つありまして」
「一度死んだだけではか」
「暫くすれば冥界から帰ってきます」
そうだというのである。
「それだけです」
「魔物らしいな。それは」
「それは妖怪もですが」
妖怪についてもだというのである。
「それはです」
「妖怪もか」
「妖怪と魔物は元々同じものですから」
老人はこのことも指摘してみせた。
「実際に」
「だから同じか」
「はい、同じです」
また答えてみせる老人だった。
「どちらも九つの命があります。それに」
「それにか」
「命は九つから減ることがありません」
こうだともいうのであった。
「ですから実質的にはです」
「不死身か」
「はい、そうなります」
まさにそうだというのである。
「魔物も妖怪もです」
「不死身か」
「貴方もどうでしょうか」
こうして言ってもきたのだった。誘いの言葉だった。
「魔物になられますか」
「魔物にか」
「十三柱目の魔神でもいいですが」
こうも言ってきたのであった。
「それでどうでしょうか」
「悪いが遠慮する」
牧村は素っ気無い声で返した。
「俺は魔物になるつもりはない」
「では魔神は」
「余計にない」
それにもだというのだった。
「何もかもだ。そしてだ」
「妖怪にもなられませんか」
「俺は人間でいたい」
これが彼の言葉だった。
「だからだ」
「ふむ。肉体的にはですか」
「妖怪と人間の心も少し違うな」
「妖怪も魔物も妖精と言われることがあります」
「妖精か」
「確かイギリスの言葉ですが」
日本ではなくだ。その国でのことだというのである。
「そうなります」
「そうか、イギリスか」
「我が同胞人狼から聞いたことですが」
そのイギリスにいる魔神からの言葉なのだという。
「イギリスでは妖怪も魔物もです」
「妖精になるか」
「妖精はよき存在でもあり悪き存在でもある」
言葉はこうなっていった。
「そういうものだとか」
「妖精か」
「考えてみれば魔物は妖怪からなっています」
「その通りだな。それはな」
「だからそれも一理あります。つまり我々は」
楽しげに笑ってだ。次の言葉は。
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