第三十八話 老婆その六
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「だが」
「だが?」
「貴様達と戦うにしろ」
「はい」
「妖魔達か」
このことも言うのであった。
「あの者達にしてもだ」
「ほう」
老人も今の彼の言葉に反応を見せた。そうしてだ。
目の光を変えてだ。こう言ってきた。
「御存知でしたか」
「話は聞いている」
こう返してもみせる。
「既にな」
「そうですか。実はですね」
「実は?」
「彼等は私達にとっては非常に好ましくない存在なのです」
このこともまた牧村に話すのであった。
「何故ならですが」
「それは何故だ」
「私達は戦いを楽しみと考えています」
「そうだったな。確かにな」
「しかし彼等は違います」
そしてだ。次に言う言葉は。
「彼等は破壊と殺戮、いえ」
「いえ?」
「混沌の存在です」
「混沌か」
「私達もまた秩序を重んじています」
「秩序をか」
「はい、秩序をです」
その彼等の秩序も話すのであった。
「戦いにおいてもルールとモラルを見ています」
「しかし妖魔はか」
「混沌です」
秩序と対極にある。それだというのである。
「そうした存在ですから」
「だからこそ対立するのだな」
「そうなります。私達も彼等についてはまだ殆ど知らないのですが」
「殆ど!?」
牧村は魔神である老人のその言葉に目の色を変えた。
「どういうことだ、それは」
「どういうこととは」
「何故魔神が知らない」
問うのはこのことだった。
「それは何故だ」
「何故か、ですか」
「何万年も生きているな」
「はい」
老人もこのことは頷いてみせた。
「その通りです」
「では何故知らない」
「我々もです」
「我々もか」
「知らないこともあります」
そうだというのである。
「ましてやです」
「ましてや?」
「それが過去ならば」
「過去?」
「私達の前の時代の存在ならばです」
その妖魔達への言葉だ。
「知ることができないのも道理ではないでしょうか」
「記録は残っていなかったのか」
「人間は残していたようですね」
「微かに、でしかないようだがな」
「しかし残していたのは事実です」
それはだというのである。
「ですが我々は」
「知ることができなかったか」
「残念ながら」
何時になくその言葉に感情を入れている老人だった。その感情は悔しさであり悲しさでもあった。そうした感情を珍しく見せていたのである。
「その通りです」
「そうか」
「そしてです」
ここまで話したうえでまた牧村に対して言ってきた。
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