第三十七話 光明その十五
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「事故は絶対に起こるってこととね」
「色々な人間がいることか」
「それを常に頭において考えるといいよ」
また話したのだった。
「よくね」
「わかった。それではだ」
「それでは?」
「それを踏まえて行って来る」
これが今の牧村の言葉だった。
「あいつを迎えにな」
「そうしてくれると有り難いよ。あと来期」
今度は牧村の名前を呼んでの言葉だった。
「一番大事なことを言っておくよ」
「何だ、それは」
「あんたは私とお爺ちゃんの孫だよ」
微笑んで彼に言うのである。
「未久もね」
「二人共か」
「二人共同じ位に可愛いんだよ」
そしてこうも言うのだった。
「それはわかっておくんだよ」
「孫か」
「そうよ、孫なんだよ」
目も温かいものになっていた。
「孫だからね」
「孫か」
「中にはそうじゃない人もいるけれど」
一応こう前置きをしてだった。
「皆子供や孫は可愛いものだよ」
「皆か」
「人間ならね」
それならばというのだ。
「だからね」
「わかった。ではだ」
「気をつけて行って来るんだよ」
行こうとするその孫への言葉だ。
「いいな」
「そうさせてもらう」
こうして妹を迎えに行く。そしてだ。
駅に着くとだ。もう彼女が明るい顔でいた。黄色のタンクトップに白いひらりとした感じのミニスカートだ。リュックを背負って素足を見せている。
その彼女がだ。すぐに兄に言ってきた。
「今来たところだったのよ」
「いいタイミングだったか」
「うん。ただ」
「ただ?」
「お兄ちゃんのサイドカーって相変わらず目立つね」
言うのはこのことだった。
「夜の中でもすぐにわかったわ」
「すぐにか」
「ええ、すぐにね」
わかったというのである。
「目立つから」
「黒い色でもか」
「銀色がね、夜の中で光るから」
「それでか」
「うん、それでなのよ」
こう兄に話す。
「わかったのよ」
「それでか」
「しかも普通のバイクじゃなくて」
「サイドカーだからか」
「余計にね。目立つのよね」
こう話すのだった。
「凄くね」
「夜の中で目立つのはいいことだな」
「そうね。事故も起こりにくいし」
未久もそれには頷く。頷きながらサイドカーのその側車に乗る。そのうえで中にあるヘルメットを出してだ。それを両手に持つのであった。
「目立つとね」
「目立つのはこうした場合いいな」
「そうね。確かにね」
「事故に遭わなくて済む」
「ええ。それに」
さらに言う未久だった。
「見つけやすいしね、待つ方もね」
「そういうことだな。なら行くか」
「お爺ちゃん元気にしてる?」
「ああ、元気過ぎる程だ」
こう妹に答える。
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