第三十七話 光明その十四
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「だからだ」
「そういう過信は危険だよ」
「過信か」
「サイドカーはそれでもあんたは違うんだから」
彼自身はだというのだ。
「人は失敗するものだからね。だからそれをしないようにね」
「注意しておくのか」
「そういうことだよ」
こう話すのであった。
「それでわかったね」
「そうだな。言われてみればそうだな」
「そうよ」
「俺だけで事故を起こすのはいいが」
それはいいというのだった。
「しかしだな」
「他人を巻き込まないようにね」
「そういうことだな」
「そうよ。それでだけれど」
「それでか」
「事故を起こして相手が若しね」
その相手のことも孫に話すのだった。
「変なのだったら問題だからね」
「変な奴か」
「世の中色々な人間がいるものだよ」
「そうだな。中にはな」
「ヤクザやゴロツキだっているんだよ」
こうした存在のも話に出した。
「そういう手合いだったらね」
「問題か」
「まあ。あんただったら」
孫をちらりと見てまた言った。
「少なくとも変なのが相手だったら」
「叩きのめす」
返答はこれだった。
「それだけだ」
「相手がヤクザ屋さんでもだね」
「叩きのめすのが問題なら」
「そういう時は弁護士だね」
それだというのだった。この辺りは流石に年の功であった。
「それを呼ぶんだね」
「それが一番か」
「保険会社はいいものだよ」
また孫に話した。
「本当にね」
「そういう経験があるのか」
「人間生きていれば一度はあるよ」
「事故の経験はか」
「そうだよ、あるよ」
こう孫に告げる。
「お爺さんだってね」
「事故を起こしたか」
「相手に保険のこととは別にタイヤを全部換えたいって言われてね」
「タイヤを」
「そうだよ、タイヤをね」
「事故で破損したタイヤ以外にか」
「全部だっていうんだよ」
こう孫に話すのである。
「おかしいって思うよね、これは」
「事故を起こした場所が済むのならな」
「それとは別にって言ってきてね。保険会社がそれを聞いて」
「どうなった」
「その話は自分達を通してしてくれって言ってくれたんだよ」
世の中色々な人間がいる。中にはそうした妙なことを急に言い出す人間がいるということである。普段まともに見えてもそう言うのである。
「弁護士も出すって言ってね」
「それでは話は」
「その話はなしになったよ」
無事そうなったというのである。
「いいことにね」
「それは何よりだったな」
「全くね。とにかくね」
「とにかくか」
「そういう人も世の中にはいるんだよ」
「そうか」
「それは覚えておくといいよ」
また孫に話した。
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