第三十七話 光明その十三
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「だからいい」
「残念なことだな」
死神は彼のその言葉を聞いてこう述べた。
「それは」
「酒が飲めないことがか」
「酒は最大の楽しみの一つだ」
「飲める者にとってはそうだな」
「しかしそれを飲めない者にとっては何でもないか」
「少なくとも俺にはわからない世界だな」
話はここでも平行線だった。酒についてもだ。
そしてである。牧村はまた言うのだった。
「では。話は終わりか」
「終わりだ。それではだ」
「行くのだな」
「そうする。ではな」
「またね」
死神と共に目玉も言ってきた。
「すぐ会うことになるけれどね」
「すぐか」
「すぐだよ」
目を閉じさせ楽しそうなものにさせての言葉だった。
「だからね。待っていてね」
「そうさせてもらうとするか」
そんな話をしながらだった。二人で言うのだった。
そしてだ。牧村は屋敷に戻った。するとすぐに祖母から言われた。
「ああ、いいところで帰って来たね」
「いいところか」
「そうだよ。丁度連絡が来たんだよ」
「連絡?」
「あんたのお母さんからね」
こう彼に言うのである。
「連絡が来てね」
「一体何だ」
「すぐに駅まで来て欲しいってさ」
こう言ってきたのである。
「駅までね」
「駅か」
「未久がまたこっちに来たのよ」
「あいつがか」
「そうだよ。今金曜だよね」
「ああ」
「土曜と日曜はこっちで遊びたいってさ」
それで大阪にまた来たというのである。
「それでね。ここまでね」
「それでなのか」
「そうだよ。それであんたが迎えに行って欲しいんだよ」
「それでいいところにか」
「そういうことさ」
「わかった」
それを聞いて頷く牧村だった。
「なら今から行って来る」
「悪いね、それじゃあね」
「あいつも暇なのかそれとも忙しいのか」
「暇でもあれこれ動いていたら忙しいんだよ」
祖母はこうその孫に対して話した。
「動いていたらね」
「そういうことか」
「そういうことだよ。それじゃあね」
「行って来る」
また言う牧村だった。
「今からな」
「頼んだよ。くれぐれも事故には気をつけてね」
「事故はない」
これまた素っ気無い言葉だった。
「それはだ」
「ないのかい」
「あのサイドカーでそれはない」
博士から錬金術等まで使われて改造されていることは言っていない。だがそれにより故障をせず事故もしないようになるまでに改造されているのは事実だった。
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