第三十六話 日常その二十
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「決してな」
「決してか」
「そうだ、決してな。惑わず焦らずだ」
「己の道に戻ってか」
牧村はその話を真剣に聞いていた。そのうえでの言葉だ。
「俺は今の道をか」
「踏み外しても戻ればいい」
また言うのだった。
「そして御前ならすぐに戻れる」
「自信か」
「そう、自信じゃ」
それだともいうのだ。
「御前は自信を持って己の道を歩き続ければいい」
「では歩いてか」
「歩いていけばいい」
また言う祖父だった。
「御前の道をだ」
「それでは俺はだ」
「また座禅をするのだな」
「今はいい。だがわかってきた」
食べながらの言葉だ。おかずも食べている。それは豆腐であった。冷奴であり葱や生姜が上にかけられたものを食べながらの言葉である。
「俺はこのままだ」
「このままか」
「そうだ、行く」
こう言うのである。
「それがわかってきた」
「そうか。御前もわかったか」
「俺は俺の道を歩く」
言葉は澄んでいた。澱みは何処にもない。その言葉を出していたのだ。
「その先にあるものはわからないがな」
「それでも悪い道じゃないよ」
それはしっかりと言う祖母だった。
「人の道だね」
「言うならな」
「それならいいよ。人として生きるんだよ」
「わかった、それなら」
「行くぞ」
こう話してだった。三人で話してだ。
牧村は今自分が歩くべき道を歩んでいた。戦いの中にあってもだ。それでもだった。
第三十六話 完
2010・5・1
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