第三十六話 日常その十七
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「その通りだけれどね」
「長女だしね」
「私喫茶店好きだし」
そこにあるのは義務だけではなかった。
「だから。やっぱり」
「じゃあ同じじゃない」
「千里ちゃんも教会継がないといけないのよね」
「そうよ。だからね」
「私と同じね、本当に」
「けれど。いい感じね」
叔母は今度は感じという言葉を述べてもみせた。
「年下の相手なんてね」
「年下がいいの?」
「千里ちゃんには似合ってるじゃない。三人姉妹の長女さんだし」
「私だってそうだけれど」
それは若奈も同じであるのだ。彼女も三人姉妹の長女なのである。しかも親戚同士の関係もあって容姿も背丈も似ていたりする。しかも声もだ。
「それは」
「あんた達本当にそっくりだしね」
「それいつも言われるわ。学校だって中学校まで一緒だったし」
「八条中学だったわよね」
「ええ、そこよ」
そこが若奈の出身中学だった。それと同時に千里のだ。
「そこだったから。ただ千里ちゃんは」
「高校から天理だしね」
「天理高校だったわよね」
「そうよ、そこよ」
まさにその高校だった。
「それで今天理大学なのよね」
「将来教会継ぐ為の勉強をしないといけないからね」
「親元を離れて一人なのね」
若奈はその自分に何もかもよく似た親戚の女の子のことを考えていた。似ているだけに親近感はかなりのものである。そのうえでの言葉であった。
「大変じゃないかしら」
「大変だけれど千里ちゃんは頑張ってるでしょうね」
「あの娘私よりずっと頑張り屋だし」
「そうかしら。若奈ちゃんも同じじゃないかしら」
「私も?私は違うわよ」
「それは自分でも気付かないだけよ」
叔母は若奈に笑って話すのだった。
「その証拠に大阪まで来て」
「大阪に?」
「そうよ、そこまで来てね」
こう言うのである。
「それで彼氏と一緒になんて。頑張ってるわよ」
「それは別に」
「こういう娘だからね」
姪にはこれ以上言わせずにだ。牧村に笑みを向けての言葉だった。
「宜しくね」
「一緒にか」
「そうよ、見たところあんたは接客は不得手だね」
それはもう見抜かれていた。牧村の無愛想さはだ。
「そのかわりお茶やお菓子の方は得意だね」
「食べるのも作るのも嫌いじゃない」
「見た通りだね。まあ接客は百億ドルの微笑があるからね」
今度は若奈を見るのであった。彼女も忙しい。
「そっちは気にしなくていいよ」
「いいのか」
「顔もいいしね」
今度は彼の顔についても話す。
「無愛想でも顔がいいとカウンターにいるだけでいいんだよ」
「叔母さん、ちょっと」
「ちょっとって?」
「さっきから何言ってるのよ」
困った顔での言葉だった。
「前提で話してない?」
「話してるわよ」
実に
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