第三十六話 日常その十六
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「叔母さん大阪だし」
「それがどうしたの?」
「奥華大教会に近いじゃない」
若奈が叔母に対して言うことはこのことだった。
「奥華にね」
「まあそうだけれどね」
「大教会にはいつもお参りしているのよね」
「ええ、それはね」
しているというのだった。
「ちゃんとね」
「それじゃあいいんじゃないかしらって思うけれど」
「それでも。八条さんの方もお参りしないと」
真面目な顔で話すのであった。
「いけないからね」
「相変わらず真面目に信仰してるのね」
「信仰だけじゃなくてね」
「だけじゃなくて?」
「教会の雰囲気も好きだから」
それもあるというのである。
「だからお参りしているのよ」
「成程、そうだったの」
「そういえば千里ちゃんだけれど」
話がその女の子のものにもなった。
「今天理よね」
「ええ、おぢばね」
「元気にしてるかしら」
「元気みたい。ただ」
「ただ?」
「いつも高校の後輩と一緒にいるみたいなのよ」
若奈は彼女のこのことを叔母に話した。
「何でもね」
「後輩の子と?」
「そうなの、ずっとね」
いるというのである。
「二年下の男の子とね」
「あっ、彼氏なの」
「彼氏かどうかはわからないけれど。同じ奥華のしかも八条さんの信者さんらしいわ」
このことも話したのだった。
「その子がいつも側にいるのよ」
「付きまとわれてるとか?」
「それだったら詰所の人達が止めるからそうでもないみたい」
「ストーカーじゃないのね」
「ええ、そうじゃないみたい」
「だったらいいじゃない」
叔母はストーカーであることは否定されてまずは微笑んだ。
「危ない相手じゃないとね」
「けれど。何か結構能天気な子らしいから」
「能天気ね」
「それでずっと千里ちゃんの側にいるらしいわ。学校が終わったらすぐに詰所に来て」
「あら、すぐになの」
「そう、授業と部活とかが終わったらすぐに。しょっちゅう詰所にも泊まってるみたい」
「奥華の詰所は優しいからね」
「そんな子らしいのよ」
こう話すのであった。
「何でもね」
「よかったじゃない」
また言う叔母だった。
「いい子みたいだし」
「会ってないのにわかるの?」
「聞く限りじゃね。いい子ね」
「聞く限りなのね」
「そうよ、いい子ね」
見れば叔母の顔は笑顔であった。
「そうなのね、千里ちゃんもういい相手見つけたのね」
「何かもう結婚するみたいな言い方だけれど」
「だって相手見つけないと駄目な娘じゃない。若奈ちゃんと同じでね」
「私と同じって」
「あれじゃない。若奈ちゃんだってお店継ぐのよね」
「まあそれは」
若奈の家の店の話になるとだった。彼女も少し真剣な顔で頷いたのだった。
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