第三十六話 日常その十五
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「では有り難く頂く」
「ただし巨人ファンだったら定額になるからね」
「ああ、それは安心して」
また若奈が自分の叔母に対して話す。
「牧村君巨人は嫌いだから」
「いいねえ、気に入ったわ」
叔母もアンチ巨人と聞いてさらに機嫌をよくさせた。
「阪神ファンじゃなくてもアンチ巨人ならそれでいいわ」
「このお店巨人ファンお断りだしね」
「巨人の帽子とか法被着て入ったら塩かけて追い出すわよ」
本当にこう言う叔母だった。
「何があってもね」
「うちのお店はそこまではしないけれど」
「けれどあんたのお父さんもお母さんも巨人嫌いだしね」
「ええ、それはね」
若奈もよく知っていることだった。
「私だってそうだし」
「けれどそこまではしないんだね」
「お店の常連さんは巨人ファンの人いないけれど」
「うちにもだよ。いないよ」
「そうよね。大阪だしね」
「大阪で巨人ファンに人権はないよ」
事実である。尚これは関西ほぼ全域である。
「けれどあんたがアンチ巨人で本当によかったよ」
「代々一家全員アンチ巨人だ」
また言う牧村だった。
「そして阪神も嫌いじゃない」
「筋はいいわね」
叔母は彼の言葉を満足そうに聞いている。
「巨人が嫌いってなるとね」
「関西人は殆どそうじゃないのかしら」
若奈は少し冷めていた。
「やっぱり」
「そう、だからいいのよ」
また言う叔母であった。
「関西人らしくてね」
「成程ね」
「しかもよ」
ここでまた言う叔母であった。
「若奈ちゃん、あんたのお店は神戸じゃない」
「ええ」
「八条町だから余計にね」
「八条町も阪神ファン多いのよね」
「そうよね。叔母さんも一回八条町に行かないとね」
こんなことも言ってきたのだった。
「教会にも行かないとね」
「教会?」
「八条分教会よ」
そこだというのだ。
「そこにね」
「ああ、千里ちゃんのところなの」
「そう、そこにね」
行くというのである。
「そこに行かないとね」
「今千里ちゃんいないけれど」
「知ってるわよ」
若奈の言葉ににこりと笑って返してきた。
「それもちゃんとね」
「じゃあ何でなの?今高校生の女の子達ばかり来てるけれど」
「親戚だし教会にもお参りしないといけないしね」
何気に信仰も見せていた。
「だからね」
「お参りね」
「若奈ちゃんのところはいつも参拝しているからわからないけれどね」
「離れていたらなのね」
「そうよ、お参りできるのって有り難いことよ」
こう姪に話すのであった。
「若奈ちゃんもそれはわかっておいてね」
「ええ。けれど」
だがここで若奈も言うのだった。
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