第三十六話 日常その八
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「そうじゃな」
「その通りだ。しかしその存在はか」
「混沌と言うべきか」
出て来た言葉はこれだった。
「原始的な悪意、よからぬものを胎動させておるのじゃよ」
「よからぬもの?」
「うむ、闇の底から出て来る様なものだと文献には書いてあった」
こう牧村に話す。
「そしてその最も重要な文献はじゃ」
「何だ、それは」
「闇の書という」
「闇の書!?」
「混沌の書ともいうのじゃがな」
この名前も出す博士だった。
「その書に出て来るのじゃ」
「闇の書か」
「この名前は知らんな」
「初耳だ」
そのことを素直に認めた牧村だった。
「そうした名前なのか」
「そうじゃ、その書にある名前ではな」
「ああ、何というのだ」
「妖魔だとある」
「妖魔か」
「おそらくこれは当て字じゃな」
博士はこう見ていた。
「表わす適当な言葉がなかったのじゃ」
「それがか」
「そうじゃ。なかったのじゃ」
「それで妖魔か」
「うむ、それは太古に出て来たという」
話はかなり遡るものだった。
「そう、古代エジプト文明が出来た頃かのう」
「その時か」
「その時に出て来たというのじゃよ」
こう話すのであった。
「その時の髑髏天使と戦ったという」
「その時か」
「この時には魔物は出なかった。その髑髏天使は妖魔達と戦った」
「そうした髑髏天使もいたのか」
「その様じゃ。そしてじゃ」
博士の言葉は続く。
「どうやら。とりわけ力の強い髑髏天使でもあったらしい」
「とりわけだと?」
「そうじゃ。とりわけじゃ」
その話が続く。
「当然今の君よりも。そして」
「そしてか」
「魔神達を倒した髑髏天使よりもじゃ」
「どういった存在だ?」
牧村は話を聞いて珍しく言葉にいぶかしむものを入れていた。
「その髑髏天使は」
「申し訳ないがそれはまだわからん」
「そうか」
「しかしじゃ。妖魔はおる」
それは確かなのだというのだ。
「この時代に出て来るかどうかはわからんがな」
「それでもか」
「うむ、おる」
博士の言葉も強いものになった。
「それは間違いない」
「古代エジプトか」
「その時代の文献を今集めておる」
博士の動きは速かった。
「あのヒエログリフとかじゃよ」
「考古学か」
「それじゃがな」
「そこからわかるのか」
「わかると言えばわかる」
返答は今一つはっきりしないものだった。
「じゃが。難しいのう」
「解読がか」
「うむ、難しい」
このことを言うのだった。
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