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髑髏天使
第三十六話 日常その六

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「勝って当然じゃと思い上がっておる」
「ああいうの駄目」
「僕も」
「もう馬鹿にしか思えないから」
「本当にね」
 妖怪達も巨人は嫌いであった。巨人を嫌うということは日本人としてのまず第一の義務であると言ってもいいが妖怪達もそれは忠実に守っていた。
「巨人には無様な負けがよく似合う」
「その通りだよ」
「負けてこそいいんだよ」
「御飯もお菓子も美味しくなるしね」
「巨人はそういうチームじゃよ」
 巨人への言葉は冷たい博士であった。
「所詮はな」
「だよね、負けてもらわないと」
「勝ったら駄目なんだよ、巨人はね」
「もう一億年は最下位でいいし」
「全くだよ」
 妖怪達も博士と同じであった。
「僕達関西の妖怪にとってはね」
「もう巨人大嫌いだからね」
「というか好きな奴いないから」
「全くだよ」
「牧村さんもだしね」
 また牧村に話を振ってきたのだった。
「それは同じでよかったよ」
「俺はああいうチームは嫌いだ」
 牧村もそれに応える。
「自分のことしか考えないチームはだ」
「うんうん、自分達だけが球界だと思ってるからね」
「全く何様だよ」
「本当にね」
「関西では巨人の悪口はどれだけ言ってもよいのじゃ」
 博士も完全に一緒になっている。
「あと広島でも九州でも名古屋でもじゃ。横浜も東北も北海道もじゃ」
「全国だな」
「うむ、巨人は日本国民共通の敵じゃ」
 何処までも言う博士だった。
「まさにそれじゃ」
「そうかも知れないな。巨人の試合は見ても面白くない」
「それ以上に放送がね」
「もう巨人ばかり褒めてね」
「殆ど何処かの国のプロパガンダだし」
 そうしたことになってしまっているのである。
「全くねえ。あんな放送よくできるよ」
「いや、見られたものじゃないから」
「そうそう」
「関東は嫌いだ」
 牧村は言った。
「巨人を褒める場所は好きにはなれない」
「牧村さんは正しいよ」
「関東は寒いし食べ物もまずいし」
「おまけにその食べ物が高い」
「全然駄目だから」
 何故か関東について詳しい妖怪達だった。
 そしてだ。ここで彼等はまた言うのであった。
「さて、それでだけれど」
「牧村さんってまだ強くなるんだよね」
「もう一つ上があったよね」
「うむ、あるぞ」
 博士がその彼等に答えた。
「遂に最上級の階級じゃ」
「最上級なんだ」
「遂にそこまでなんだね」
「熾天使じゃ」
 その階級が今話された。
「熾天使があるのじゃ」
「それが最上級の天使なんだ」
「九つの階級の最高になるんだね」
「ここに至れば魔神の相手もできるじゃろう」
「魔神か」
 それを聞いた牧村の目の光が強くなった。
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