第三十六話 日常その四
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「らしくあればそれで」
「人間らしくか」
牧村は不意にこうも言った。
「そうしたことだな」
「そうじゃ、人間らしくじゃ」
博士は牧村の今の言葉に会心の顔で頷いた。
「そういうことじゃよ。禅じゃが」
「それか」
また禅の話にもなるのであった。
「あれは悟りに至る為に行うものじゃな」
「そう言われているな」
「悟りを得るのは何か」
博士はここから話した。
「何じゃと思う」
「人だからだな」
「そう、人だからじゃ」
まさにその通りだというのである。
「人じゃから悟りを得られるのじゃよ」
「そういうことか」
「妖怪でも悟りを得られるがじゃ。その心が人のものとなればじゃ」
「あれっ、そうした意味だと僕達も人間?」
「そうなるよね」
妖怪達は博士の今の言葉からこのことに気付いた。思わぬ事実にだ。
「人間なのかな」
「違うんじゃないかな」
「いや、そういう意味では人間じゃよ」
そうであると。妖怪達に対しても告げたのだった。
「御主達もな」
「そうだったんだ、人間だったんだ」
「僕達も」
「今までそんなこと全然思わなかったよ」
「人は心で人になるものじゃよ」
博士の今の言葉は深いものだった。それもかなりだ。
「しかし姿形が人であってもじゃ」
「心が魔物なら」
「それで魔物なんだね」
「左様、要は心じゃ」
また妖怪達の言葉に応えながら牧村に対して話していた。
「そういうことなのじゃよ」
「心ねえ」
「それなんだ」
「そういうことじゃ。君は人として戦うのじゃ」
「これからもだな」
「頼んだぞ。わしが言うのはこれじゃ」
牧村を見ながらの言葉だった。
「しかしよく覚えておいてくれ」
「わかった」
牧村は博士の今の言葉にこくりと頷いた。
「そうさせてもらう」
「さて、話はこれで終わりじゃ」
「じゃあ博士、これからどうするの?」
「何処か行く?」
「大阪見物するの?」
「大阪城にでも行くかのう」
博士は周りの妖怪達の言葉に微笑みを浮かべて述べた。
「これからのう。行くとするか」
「大阪城、いいね」
「あそこは見るだけでもう雰囲気があるし」
「いいお城だしね」
「私秀吉さんに会ったことありますよ」
ろく子がさっきよりもその首を伸ばしながら言っていた。二十メートルは伸ばしているようであるがそれでも全く平気な様子である。
「小柄で。すばしこい人でしたね」
「ああ、太閤さんね」
「猿だね、猿」
「またの名前を禿鼠」
織田信長が名付けた仇名である。これを言うのだった。
「そうともいったね」
「猿だけじゃなかったし」
「そうそう」
「秀吉は大阪の英雄じゃからな」
博士はここで手に一冊の本を出してきた。それはまさにその豊臣秀吉
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