第三十六話 日常その三
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「やっぱりこういう人かな」
「それだったら怖いけれど」
「どうなのかな」
「ああ、安心するといい」
博士がここで妖怪達に対して言った。
「牧村君の妹はじゃ」
「やっぱりこういう人ですか?」
「こうした無愛想な感じで」
「表情がないとか」
「全然別人じゃよ」
博士は妖怪達に対して真実を話した。
「もうな。顔も表情も何もかもが違うのじゃ」
「えっ、嘘」
「そんなに違うの」
「全然なの」
「左様、全然じゃ」
また言う博士だった。
「小柄で可愛い娘じゃよ」
「へえ、小さいんだ」
「しかも可愛いっていったら」
「美少女!?」
「そうなるよね」
「そうじゃな。美少女じゃな」
博士もその言葉に頷いた。その通りだというのである。
「まあ牧村君も顔はいいがな」
「顔もスタイルもいいけれどね」
「けれど無愛想だから」
「それがねえ」
「問題なのよね」
妖怪達の言葉には容赦がない。しかしそれは勝手知ったる相手だからであった。
「顔はよくてもね」
「愛想がいいって大事だからね」
「愛想がいいのは七難隠す」
「そうそう」
「俺がそこまで愛想がないのか」
言われてそれで言った彼だった。
「そうだったのか」
「うん、ないよ」
「残念だけれどね」
「っていうか自覚していないの?」
「自覚はしていた」
していない筈もないことだった。
「だが」
「だが?」
「俺はそれで特に悪いと思わない」
「そう言うんだ」
「それでも」
「個性だ」
今度は単語を出してみせたのである。
「これは俺の個性だ」
「まあね。無愛想じゃない牧村さんってね」
「ちょっと考えられないし」
「確かに」
妖怪達もそれは言う。
「というか想像するのが困難っていうか」
「そんな牧村さんってどうかな」
「気持ち悪い?」
「にこにこと笑ったりしたらね」
「夢に出そう」
彼等もかなり言う。ある意味容赦がない。
「そうそう、しかもね」
「悪夢だよね」
「それ以外の何者でもないよね」
「いらっしゃいませ、とか笑顔で言う牧村さんってね」
「有り得ないし」
「まあそうじゃな」
ここで博士も自分の周りで言う彼等の言葉に頷きはした。
「実際に想像するのがかなり難しいことじゃ」
「牧村さんは牧村さんでいいですよ」
ろく子もいた。その首をいつもの様に伸ばしての言葉である。
「それで。らしくですよ」
「らしくか」
「はい、らしくです」
伸びた首の先には知的な笑顔がある。身体は相変わらずスーツにズボンだ。この格好は今日も変わらない。ズボン派のままである。
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