第三十六話 日常その一
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髑髏天使
第三十六話 日常
牧村は博士と会っていた。場所は中之島図書館だ。大阪市庁のすぐ隣にいるその図書館に入ってだ。そのうえで話をしていた。
「ここにも何度か来たのう」
「そうなのか」
「文学の研究でじゃ」
それでだというのだ。
「織田作之助の研究でじゃ」
「織田作之助か」
「知っておるな」
このことも話してきた。
「あの作家のことは」
「この大阪で生まれ育った作家だったな、戦争中に主に活躍した」
「うむ、戦後すぐに亡くなった」
博士はこのことも話した。
「その作家じゃ」
「織田作之助のことも研究していたのか」
「わしはそっちの方も勉強しておるよ」
またほっほっほと笑って言う博士あった。
「他にも芥川や太宰も研究しておる」
「そうした作家もか」
「そうじゃ。意外か?」
「法学博士ではなかったのか」
牧村が問うのはこのことだった。
「確か」
「あれ?医学博士じゃなかったっけ」
「工学じゃないの?」
「哲学なんじゃ」
「神学も持っていたような」
周りから妖怪達が出て来て言う。彼等も一緒だった。
「理学も持っていたよね」
「他にもあったんだ」
「わしはありとあらゆる学問を研究しておるのじゃ」
その博士の言葉だ。
「だからじゃ。文学博士でもあるのじゃよ」
「他の博士号も持っているんだ」
「法学とか哲学も」
「理系まで」
「左様、伊達に長生きはしておらんよ」
今度は歳のことまで話に出した。
「それもじゃ」
「ううん、やっぱり学問に生きてるんだね博士って」
「そうだね」
皆それを見てまた話す。妖怪達がだ。
「けれど文学にも詳しくて」
「この図書館にも来ていたんだ」
「成程ね」
「じゃからここはよく知っておる」
博士はまた言った。
「最近来ておらんかったがな」
「そうなんだ」
「それで今ここに来たんだね」
「久し振りに」
「左様。それでじゃが」
ここでまた話す博士だった。
「面白いことがわかったぞ」
「面白いことか」
「そうじゃ、わかったのじゃよ」
今度は牧村に対して話していた。古風な、そしてかなり年代ものの席に座ってそのうえで向かい合い話す二人だった。妖怪達はその周りにいる。近くに人が来ればさっと消える。隠れるのはかなり上手かった。
「髑髏天使のことじゃが」
「それで何がわかった」
「今君は智天使じゃな」
「そうだ」
これはもう言うまでもないことだった。
「それはな」
「そうじゃ。それで智天使じゃが」
その話だった。そのものずばりであった。
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