第三十五話 瞑想その十七
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「大船に乗ったつもりで待っていてくれ」
「不安だが」
「それでも安心しておいてくれ」
やり取りがちぐはぐではあった。しかしそれでも言葉は出された。
「妖怪達が今まで見つかったことはない」
「ならいいがな」
「そういうことだからね」
「大阪のことも充分知ってるしさ」
「もう遊び場だよ」
「遊び場か」
妖怪の一人の言葉に反応した。
「そうなのか」
「もう全然ね」
「それこそ隅から隅まで知ってるよ」
そこまでだというのである。
「そういうことだからね」
「安心していて」
「ならいいがな」
「それじゃあね。明日からね」
「また一緒だよ」
「明日からか」
「うむ、通うぞ」
博士がここでまた明るい声を出してきた。
「神戸から大阪までな。実は孫の一人が大阪にいるのじゃよ」
「お孫さんがか」
「孫娘じゃ。もう結婚しておってな」
「その人の家に厄介になるのか」
「いやいや、神戸から大阪は日帰りでいける」
これは事実である。神戸から大阪は実に近いのである。尚京都と大阪もわりかし近い。奈良とも近い。大阪の交通の便は実にいい。
「じゃからそれはせんがな」
「そうなのか」
「しかし顔は見せたいからな」
「それもわかった」
「では明日な」
こう話して今は電話が切れた。だがすぐにであった。
また電話がかかってきた。今度の相手は若奈だった。彼女は心配するような声で電話の向こうの牧村に対して言ってきたのであった。
「ねえ、大阪はどう?」
「大阪はか」
「食べ物合う?身体壊してない?」
こう彼に問うのだった。
「トレーニングしてる?ストレスは溜まってない?」
「どれも大丈夫だ」
気遣う若奈にこう返した。
「まず食べ物だが」
「ええ」
「美味い」
まずはそれから話したのである。
「噂以上だ。どれを食べてもいける」
「そうなの」
「そして身体の調子もいい」
次にはこのことを話した。
「おかげでトレーニングも順調だ。それにストレスもだ」
「全部大丈夫なのね」
「全部だ。何の心配もない」
「そう、よかったわ」
そこまで聞いて安堵した声をあげる若奈だった。
「それを聞いて安心したわ」
「そうか」
「それじゃあね」
ここで若奈はまた言ってきた。
「私もそっちに行くから」
「大阪にか」
「行っていいわよね」
あらためて彼に問うてきた。
「私もそっちに」
「店はいいのか」
「お父さんもお母さんも許してくれたわ」
電話の向こうで微笑んでいるのがわかる。そうした言葉だった。
「ちゃんとね」
「そうなのか」
「こっちに叔母さんのお店があってそこに住み込んで働くってことでね」
「それで決まったのか」
「そうなの。お店の名前はマジシャンってい
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