第三十五話 瞑想その十七
[2/2]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
うの」
店の名前も話すのだった。
「うちの姉妹店なのよ」
「そんな店もあったのか」
「夏の間ずっとこっちにいていいって」
若奈の声が弾んでいるのがわかった。
「有り難いわよね」
「そうだな。それではな」
「明日から大阪に行くから」
「トレーニングを見てくれるのか」
「ええ、そうよ」
その弾んでいる声での言葉だった。
「だから。楽しみにしておいてね」
「わかった。それではな」
「まだよ」
電話を切ろうとする牧村を止めてきた。
「一つ聞きたいことがあるけれど」
「何だ、それは」
「牧村君が今いる場所って何処?」
それを問うてきたのだ。
「そこって何処なの?」
「此花だ」
そこだと答えた。
「そこにいるが」
「そう、此花なの」
「そのマジシャンという店は何処にある」
「天王寺よ」
そこだと答えた若奈だった。
「JR天王寺駅の近くにるのよ」
「便利のいい場所だな」
「そうでしょ、とてもね」
若奈の声が笑っていた。明らかにだ。
「大阪の何処でもすぐに行ける場所なのよ」
「またかなりいい場所だな」
「大阪、楽しみにしているからね」
「わかった。それではな」
「明日からね」
こう話して電話を切った。牧村の周りは普段と変わらなくなってきていた。日常は彼が気付かないうちに静かに包んでいたのである。
第三十五話 完
2010・4・14
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ