第三十五話 瞑想その十三
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「いや、全く」
「そこまで早いか」
「早いのはいいけれど交通安全だからね」
ここでは母と同じ言葉だ。尚その母はこの祖母の娘である。
「それは気をつけておいてくれよ」
「お婆ちゃんも同じことを言うな」
「同じことって?」
「お袋とだ。同じことを言うな」
「あはは、それは当たり前だよ」
祖母は孫の言葉を受けて今度は笑顔になった。そうしてそのうえで言うのである。随分と明るい感じの祖母だ。謹厳な祖父とは正反対だ。
「だって親娘なんだよ」
「だからか」
「だからだよ。当たり前じゃないかい?」
その笑顔でこう言うのだった。
「それであんたは」
「お婆ちゃんの孫か」
「お爺ちゃんの方に似ているけれどね。ただ未久はね」
もう一人の孫のことも話すのだった。
「私達に似たね」
「そうだな。それはな」
「小柄でしかも運動神経がよくて」
そこから話すのだった。
「それに可愛いからね」
「顔もか」
「あの可愛さがいいんだよ」
そしてこうも言うのであった。
「本当にね。そっくりだよ」
「あいつはお婆ちゃんの血か」
「そうだよ、あんたはお爺ちゃんとあとは」
「あとは」
「あの人の血だね」
「親父だな」
それはすぐにわかった。
「親父の血だな」
「そうだよ。やっぱり男の子だね」
「そうか。俺はお爺ちゃんと親父の血か」
「間違いないね。まあそれがいいんだよ」
「いいのか」
「親がはっきりしているのはいいことだよ」
こう孫に話すのである。
「少なくとも誰かはっきりしないよりはずっといいじゃないか」
「それもそうだな」
「まあそれでも」
ここで祖母のその口調が変わってきた。
「何だね」
「どうした?」
「そっくりだね」
「そっくりか」
「あんたとお爺ちゃんはそっくりだよ」
こう温かい声で言うのだ。
「本当にね」
「そんなにか」
「無口っていうか無愛想で」
「無愛想なのは自覚している」
実際にそれをわかっている彼だった。
「それはだ」
「そうなのかい」
「しかし。似ているか」
「似てるよ、しかも一つのものを見るしね」
そうしたところも似ていると話す祖母だった。
「本当にね。まあいいとおもうよ」
「いいか」
「そうだよ。じゃあお昼にするかい」
そして今度は昼食の話をしてきた。
「お魚だけれどいいかい?」
「魚は好きだ」
「いいことだよ。魚が好きなのはね」
「身体にいいからだな」
「そうだよ。魚は身体にいいんだよ」
また笑顔になって話す祖母だった。
「だからね。食べようかね」
「それで何だ」
「鰯だよ」
祖母が最初に話に出したのはそれだった。
「それとキスだよ」
「鰯にキスというと」
「天麩羅だから。お店で買ってき
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