第三十五話 瞑想その十二
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「二人で実に勝手に言ってくれるな」
「そう?もう決まってることだし」
「半分以上ね」
「半分以上か」
「お母さんあそこのマスターとも奥さんとも仲良くなってるし」
「何時の間にだ」
「この前からよ」
息子にも笑って返す。
「そうなれたのよ」
「本当に何時の間にだ」
「お母さんを甘く見ないの」
にこりと笑っての言葉だった。
「そういうことの抜かりはないわ」
「抜かりなしか」
「そう、抜かりなしよ」
また言うのであった。
「さて、大学卒業したらすぐにね」
「お兄ちゃん永久就職ね」
就職まで決まっていた。
「よかったわね」
「就職もか」
「だって。喫茶店のマスターじゃない」
妹は能天気に兄に話す。
「それそのものじゃない。マジックのマスターよ」
「勝手に決めてくれるものだな」
「だから決まってるから」
強引にそうだと返す未久だった。しかも母に対しても言う。
「ねえ、お母さん」
「そうよね」
しかも母もにこりとして返す。
「来期は無愛想で客商売には向かないけれど」
「それがわかっていてもか」
「そうよ。それでもよ」
さらに話すのだった。
「お茶やコーヒーを淹れるのは美味いしお菓子だって上手だし」
「それでか」
「お客さんの相手は若奈ちゃんがいるし」
完全にそう決めつけていた。
「だから安心よね。あの笑顔は無敵だから」
「百億ドルの微笑よね」
「その通りよね」
妹と二人でそこまで言う。
「まあ今はお菓子の腕を磨いておきなさい」
「そのまま作っていればいいから」
「お菓子はか」
「そうそう、そのままね」
「作っていればもっと美味しくなるし」
二人で息子、そして兄に話す。
「そういうことだから」
「頑張ってね」
「話は聞いた」
一応こう返す彼だった。
「しかしだ」
「話はしたからね」
「もう決まってるからね」
無理にでもそういうことにする二人だった。そんな話をしながらパンケーキを食べる。そのうえでそれを食べ終えてそれからだった。
牧村は家を出てだ。そうしてサイドカーに乗り神戸に戻った。祖母がその彼を出迎えることになったが孫を驚いた顔で出迎えたのだった。
そしてだ。こう言ってきた。
「あんれまあ」
「何かあったのか」
「もう戻って来たのかい」
こう言って驚くのだった。
「もうなのかい」
「それでか」
「そうだよ。まだお昼にもなってないよ」
「サイドカーを飛ばしてきた」
「それでも随分と早いねえ」
孫の話を聞いてもこう言うのだった。
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