SAO編
三十六話 “切り開く運命”と“絶望と言う幕切れ”
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分、向こうからこっちを連絡禁止指定したんだ……ギルドもリーダー権限で強制脱退させられてる」
「そ……そんな……」
これでは追跡は不可能だ、相変わらず眼に涙を溜めながらウィンドウを必死に捜査しているサチを横眼にどうすべきか考える。
しかし、あちらが本気で此方からのコンタクトを拒否していると考えると、正直な所どうにも……
「…………」
「……キリト?」
おれは黙り込んでしまった義弟に目を向ける。
顔を下に向け伏せがちになったその目線からは、何の感情も読み取る事が出来ない。
「兄貴……頼みがある」
「……言ってみろ」
何かただならぬ気配を感じて俺は正面からキリトの方へと向き直る。
しかし、自分から頼みが有ると言っておきながら、その眼は決して俺の眼を正面から見ようとはしない。目線はうつむきがちに地面を睨んだままで固まり、まるで俺の眼を見る事その物を恐れているかのようだ。
「俺との義兄弟設定を……破棄してほしい」
「…………っ!」
正直、その時俺が受けた衝撃は、先程サチ達の元へと駆けつけた時のそれに迫る物が有った事を認めなければならないだろう。
その時の答えを冷静に返す事が出来たあの時の俺は、今の俺から考えても中々の胆力の持ち主だったと思う。
義兄弟設定は、いわば相手を心の底から信頼している事の証とも言うべき物だ。
それを破棄すると言う事は……
「き……キリト……何言って」
「サチ、黙ってろ」
「でも…………!」
「こりゃ俺らの問題だ」
そう言って、俺はキリトの方へと一歩前に出る。
「……本気だな?」
「……ああ」
ボソリと答えたキリトに、意識せずにだろうなと呟く。と言うか、此処で冗談だなんて言おうものなら筋力値最大で殴り飛ばす所だ。
「良いだろ。勝手に何処へでも行け」
「り、リョウ!」
「黙ってろ!」
「……っ」
まだ何か言おうとするサチを一喝して黙らせ、俺はウィンドウから義兄弟設定の解除をキリトに向かって発信。受諾。
その瞬間から、俺とキリトはシステム上……そして俺達自身の心の中でも、義兄弟では無くなった。
まぁ、一方的にでも破棄できる義兄弟設定を、一応俺に相談して来ただけでもまだいいか……
「暫くは、その面俺に見せんな」
「……わかった」
「……っ!」
何の動揺も、質感も無く放たれたその言葉に、俺の方が痛みを味わう。
サチは何も言えず、泣きそうな顔で立ちつくしているだけだ。
「いままでありがとう……ごめん、リョウ兄さん」
「…………」
そう言って転移門の中へと消えて行ったキリトを、俺はただ黙って見送る事しか出来なかった。
ただ、キリトの姿が消えた後で、俺の口から小さく言葉が漏れる。
「謝んな……馬鹿」
───
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