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SAO─戦士達の物語
SAO編
三十六話 “切り開く運命”と“絶望と言う幕切れ”
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のか、その眼に涙があふれる。そして……リョウの背に、顔を押し付けた。

「お、おい!?サチ!?」
「うっ……ひくっ……うああああああああ!」
 リョウは驚いたようにサチに目を向けると、泣いているのが見えたのだろう。キリトの方を向いて尋ねる様な表情をする。

「ケイタは主街区に居るけど……」
 その先の言葉は発する事無く、キリトは首を横に振った。

「そうか……」
 途端にリョウの表情が悲痛な物へと変わり、背後のサチはより一層強く泣き始める。
キリトにとっても、そこまで言う事が限界だった。
俯き、泣きそうになる事を必死にこらえる。
レベルを偽り、此処がどういうエリアであるかを知っているにもかかわらず、つまらぬ自尊心を通して、結果として三人を殺した。
その結果から来る自責の念は、キリトの脆い精神を締め付け、それ以上の発言も、動きすら困難な物にさせていたのだ。

結局、キリト、サチ、リョウのメンバーがその部屋を出て、ケイタに事態を報告すべく主街区へと向かい始めたのは、それから三十分後の事だった。

────

 黒猫団が泊っていた宿が有る主街区に何とか到着し、俺とサチ、キリトは宿へと向かう。

「…………」
 三人のうちの誰もが声を発しようとはせず、うつむいたまま無言になってしまっている。
それはそうだろう。ギルドメンバーを一気に三人も無くしたのだ。むしろこの状況で明るく元気にふるまえる奴がいたならば、俺はそいつの正気を疑う。
やがて無言のまま俺達はキリト達の泊まる宿へと辿り着き、俺は一人だけ建物の外で待つ事にして、サチとキリトだけがケイタへの報告のために宿の中へと入っていった。

 壁に背を預けて二人を待ちながら、俺は二人の元へと駆けつけた時の事を思い出す。
あの時、俺は最前線の迷宮区に居た。
そこから何故間に合ったのかと言うと……簡単にいえば俺とキリトが義兄弟だったからだ。

 俺はキリトがあのギルドに入ってから、一日の中でかなり頻繁にキリトのステータスと残りHPを確認するようにしていた。
本人は隠しているものの、キリトはあのメンバーの中で突出して高いレベルを誇るため、原則的に戦闘の中で体力が大きく減る事は殆どない。
しかしそれは逆に言うと、俺から確認できるキリトのHPが大きく減った時は、彼や彼と共に居るはずのギルドメンバー全員にとって、かなり深刻な危機が迫っていると言う事の判断材料にもなるのだ。

 その結果、キリトだけでなく、小さなころからの友人でもあるサチの事も気がかりにだった俺は、こまめにキリトのHPを確認する事で、キリトやサチに危険が迫っていないかどうかを確認し続け、何かあれば即座に駆けつける事が出来るよう構えていた訳である。

 あの時も、一つの戦闘を終えてキリトの状態を確認
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