SAO編
三十四話 最低の選択
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キリトが答えを返す。
「多分、意味なんて無い……得する人間なんてのも居ないんだ。この世界は、始まった時点で大事なことが終わった後だったんだと思う」
キリトの答えは、彼なりに必死に考えた上での答えだったのだろう。不器用ではあったがその声からは彼なりの葛藤が聞き取れた。
「……君は死なないよ」
そう言って、必死にサチの不安を和らげようとしているであろう義弟に俺は心の中で感謝する。
今、サチに必要なのは隣に居て不安を和らげ、彼女を護ってくれる存在だ。
キリトは結局未だに自身のレベルを隠したままあのギルドの中にいるが、彼奴が頼りになる存在だと言うのは、サチ自身もうっすらと感じてはいるだろう。
ならば、此処はキリトに任せた方が無難だ。レベル的に下手に介入出来ない俺がしゃしゃり出るより、このままにした方が良い。
そう思った俺は、その後、暫くしてからキリトとサチが水路から出て行き、ケイタから見つかった事を知らせるメッセージが飛んでくるまで、一切二人と接触せず、宿屋に戻ったキリト達と合流してからも、何も知らないふりをした。
キリトが、サチの盾剣士への転向を無理にする必要が無い事や、自分自身に前衛の負担がかかる事には特に問題が無いこと等を伝えるのを聞いてから、結局無駄足を踏ませてしまったと謝るケイタの声を背中に受けつつ、俺は自身の泊まる階層へと戻って行った。
これでいいと。そう確信しながら……
────しかし、後になって振り返ってみれば、なんてことは無い。
あの瞬間、俺はキリトの義兄として。もしかしたらサチの幼馴染としても、ある意味で最も残酷な選択をした。
まだ十五歳の少年に、人一人の「命」を背負わせ……そして何より、その重みから……「サチ」と言う、自分にとっての特別な人間の「命」を背負うそのプレッシャーや責任から、(きっと無意識のうちに)俺は逃げたのだ。
しようと思えば、その重みをキリトと共に背負ってやる事も出来たにもかかわらず、恐れ、眼をそむけ、都合の良い様に自分を納得させて……俺は、そんな最低な選択をした。
そしてその選択という罪は……俺では無く、キリトとサチに牙を向く事になる。
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