第三十四話 祖父その八
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「太宰だって芥川だって読むし」
「そうか」
「ただ」
しかしであった。ここで顔を赤らめさせてきた。そのうえでの言葉だ。
「谷崎はね」
「谷崎はどうだ?」
「抵抗があるわ」
こう言うのである。
「ちょっとね」
「あの作家のはか」
「あれ、かなり辛くない?」
「癖はあるな」
牧村も谷崎潤一郎については知っている。耽美派にされる文豪である。
「それは事実だな」
「中学生が読んでいい作家かしら」
「作品によるが」
こう前置きしてからの言葉である。
「おおむねそうは言えないな」
「そうよね、やっぱり」
「俺も電車の中で読んでいたことがあった」
「っていうかお兄ちゃん電車に乗ったことあるの?」
未久にはこのことの方が驚くべきことだった。
「最近。それあったの?」
「たまに乗る」
そうだというのだ。
「それで身に着けた」
「そうだったの」
「そうだ。それでだ」
「どうなったの。それで」
「隣にいたおばさんに嫌な顔で見られた」
それが牧村の経験したことだった。
「それこそだ。危ない本を読んでいるようなな」
「間違っていないからね、それって」
「だから余計にだ。かつて国会で問題にもなった」
「えっ、国会!?」
国会と聞いて思わず大声を出してしまった未久だった。
「国会で問題になったの、小説家」
「そうだ。芸術かそれとも猥褻か」
こう妹に話す。
「それで問題になったこともある」
「そんなに危ない作品だったの」
「それと共にそうしたことに五月蝿い時代でもあった」
このことを話すのも忘れていない。
「だからだ」
「それでなの。何か凄い話ね」
「この辺りも谷崎は歩いたことがある筈だ」
その道頓堀の中での言葉だ。道行く人達の顔も実に賑やかなものだ。
「それ以上に織田作之助がだ」
「そうした場所なのね」
「では食べるとしよう」
ここでようやく金龍ラーメンに入る。早速豚骨スープの独特の香りとふんだんに置かれているキムチと大蒜も目に入る。その店に入る。
二人でラーメンを注文しそこにそれぞれキムチと大蒜を入れていく。そうして胡椒をかけてから二人並んで食べるのであった。
未久はそれを食べながらだ。兄に対して言ってきた。
「ねえ」
「何だ?」
「コテコテの味よね」
それを言うのであった。
「ここのラーメンって」
「そうだ。これがこの店の味だ」
「神戸のラーメンとはまた別の味なのね」
「ここのラーメンは大阪の味の一つでもある」
「一つのなのね」
「大阪のラーメンといっても様々だからな」
こう話しながらラーメンを食べる。麺は細めである。
「そうなる」
「そうなの。それでこれを食べたら」
「お好み焼きとたこ焼きだからな」
「わかって
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