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髑髏天使
第三十四話 祖父その五

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「何か。お兄ちゃんって前からそうだったけれど」
「今は余計にか」
「そうね。余計にそうなったら」
 こう兄に言う。
「物騒っていうか。やるとなったら徹底してるっていうかな」
「そうでないと生き残れない」
 不意に髑髏天使の顔になった。
「戦いはだ」
「戦いは?」
「何でもない」
 やはりそこから先は言わなかった。
「気にするな」
「まあ聞いてもわからないしわかるつもりもないけれど」
「それでいいか」
「いいわ。じゃあもう少ししたらね」
「大阪だ」
 高速道路の前の青と白の看板にそれが書かれていた。今二人は神戸から大阪に入った。その日本有数の都市にである。入ったのである。
 そして此花にある二人の祖父母の家に来た。そこは和風の大きな屋敷であった。道場もそこにあった。
 その黒い門を潜るとであった。まずは白い髪を端整に後ろに撫で付けた背筋の伸びた老人が出て来た。年齢はもう七十を優に超えているようだがそれでも姿勢はいい。服は和服であった。
 その彼が出て来てだ。すぐに二人に言ってきた。
「久し振りだな」
「ああ」
「こんにちわ、お爺ちゃん」
「来期も未久も元気で何よりだ」
 その武士を思わせる古めかしい言い回しでの言葉を出してきた。
「まずはよく来た」
「暫くここで学ばせてもらう」
「大阪見物楽しみにしているから」
「それぞれわかった。だが未久」
 最初に直接声をかけたのは彼女に対してであった。
「御前はどうもな」
「どうもな?どうしたの?」
「奇麗になったが背は伸びないな」
 言うのはこのことだった。
「それは」
「背はどうでもいいのよ」
 むっとはしたがこう返したのだった。
「それはね」
「いいのか」
「体操やってたら伸びないし」
「そうなのか?」
「そうよ、伸びないのよ」
 こう祖父に話すのである。
「ってお爺ちゃん知らなかったの?」
「わしが知っているのは武道のことだけだ」
「それでなの」
「そうだ。特にそうしたことは知らん」
 体操のことはだとまた言う。
「だが」
「だが?」
「それにしても本当に低いな」
 孫娘を何度もまじまじと見て言っていく。
「本当にな」
「だからもうその話は止めてよ」
 いい加減うんざりとした口調になっている未久だった。
「とにかくよ。中に入らないと」
「うむ、そうだな」
 祖父もその言葉に頷く。そうしてだった。
「じゃあ行くとするか」
「そうね。だったら」
「まずは茶でも飲もう」
「お茶か」
「緑茶だ」
 お茶はそれだというのだ。
「それでいいな」
「緑茶!?ああ、グリーンティーね」
 未久はそちらの名前で頷いた。
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