SAO編
三十三話 狭き世の中
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キリトが悩んだように唸るのを見て、話していた青年が助け船を出す。
少し茶色がかった短髪に、黒い胸当てと型当てをした、人の良さそうな青年だ。
「あー……すみません、お願いします」
「オッケー。えーと、僕はケイタと言います。後ろにいるのはうちのギルドの団員で、名前は《月夜の黒猫団》。キリトとは、先程ダンジョンで助太刀してもらって。それで知り合いました」
成程。と俺は思う。この階層のダンジョンならキリトには余裕だろう。
しかしよく此奴がそんな事をできた物だ。下手をすれば非難を喰らう可能性だってあるのに。
そう思い、ふとキリトの方を見ると、何故少々苦しげな光が眼に宿っていた。ふむ?
「これはご丁寧に。俺はリョウコウって言います、皆にはリョウって呼ばれてますけど……どうもウチの義弟がお世話になっているようで、ありがとうございます」
「いやいや、お世話になったのは僕らですよ。彼の助けがなきゃジリ貧だったんですから、お礼を言うのも僕らの方です」
お互い初対面なので、敬語で挨拶を交わし合う。
話し方もフレンドリーだし、中々に社交的な人物だ。こういう人間には結構好感が持てる。人柄も良い様だし、成程確かにリーダーの器としては申し分ないだろう。
この時俺は、目の前の子の青年と、義弟に気を取られていたため後ろにいた他のメンバー達にそこまで気を配っていなかった。
そのため、その声が聞こえた時も、初めは何処から聴こえたのはさえ分からなかった。
「……りょう?」
「……ふぬ?」
男性の物ではない、明らかな女性の物と分かる小さな声を俺が聞き逃さなかったのは、恐らく殆ど偶然だっただろう。
しかし前述のとうり何処からその声が聞こえたのか分からなかったため、俺は声の主を探して回りをキョロキョロと見回す。
それでも声の主を発見できず、首を傾げ……
「こっちこっち」
「……はい?」
再び同じ声、今度ははっきり、聴こえたのはケイタの方だった。
しかしだからと言ってそれはケイタの声と言う訳では無く、その後ろ、ケイタの背の高さによって俺の死角となる位置にいる黒髪の少女が、ケイタの横から顔を出していた。
その顔を見た瞬間、俺は思わず声を発していた。
「……み、みゆk「待って」あ……えっと?」
「サチ……って名前が今の私だけど……えっと、本当にりょう?」
「あ、あぁ……多分お前の知ってるりょう」
そこまで言った所で、思考がたがいにフリーズしてしまう。いきなりの事に頭が付いて来ない。
「…………」
「…………」
「吸ぅ、吐ぁ」
突然深呼吸をした俺に、周囲が驚いたように目をむく。ただし、キリトとサチは除いてだが。
「久しぶりだな。元気……してたか?」
「う、うん……」
問いかけに対して緊張した面持ちサチはチコリと頷
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