第三十三話 闘争その十五
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「人間の助手とかさ。秘書とかね」
「そういう人はいないよね」
「研究室に来る人も少ないし」
「いるのは僕達と牧村さんばかりで」
それが博士の研究室なのだった。
「もう卒論のゼミも持ってないしね」
「それもね」
「確か最後の卒論のゼミはじゃ」
博士は腕を組み遥かな過去を思い出す顔になっていた。
「受け持ったのは三十年前だったかのう」
「七十の時?」
「八十の時?」
「確か八十じゃったかな」
最早今の博士にとって十歳の年齢の違いも大したことではなかった。人間も百歳を超えれば自然とそういったものになっていくのかも知れない。
「あの時は」
「八十で卒論のゼミを受けていたのか」
牧村はその方に驚いていた。
「それはまたな」
「凄いかのう」
「有り得ない話だ」
まさにそうだというのである。
「大体百歳を超えてもまだ大学にいるしな」
「生涯現役じゃよ」
「それが通用するのって八十歳位までだよね」
「百歳超えたら人間はね」
「流石にだと思うけれど」
妖怪達ですら言うことであった。
「それでもやるんだ」
「まだまだ」
「何処までやるのって話になってるけれど」
「若しかしたらわしもじゃ」
これは博士の自己分析の言葉であった。
「本当に妖怪に近くなってきておるのかもう」
「外見は殆どそれだけれどね」
「実際悪魔博士だったっけ。博士の仇名って」
「妖怪博士じゃなかったっけ」
最早江戸川乱歩の世界であった。しかし博士の外見が異様なものなのは確かだ。白い髭で顔を覆い白髪を無造作に伸ばしそのうえで黒いスーツの上に黒マントの小柄な老人だ。異様と言わずして言葉はなかった。
「凄い仇名だけれどね」
「人間離れしてるし」
「よいことじゃ」
しかもその仇名を笑顔で受ける博士であった。
「面白い仇名は受ける方も楽しい」
「そういうものなんだ」
「博士にとっては」
「うむ。これもまた一興」
まさにそうだというのである。
「さすればじゃ。今からその悪魔博士が講義に行こう」
「講義の時間も多いしね」
「元気だよね」
確かに百歳を優に超えている老人にはとても思えないものがそこにはあった。
「それでまだだから」
「凄いよ」
「では行くとしよう」
牧村は席を立ったその博士に告げた。
「今からな」
「おお、君もあの講義じゃったか」
「毎週楽しみにさせてもらっている」
静かにこう述べた。
「では今週もだ」
「うむ、それではじゃ」
「先に行っている」
こうして講義に向かう二人だった。そして後に残った妖怪達はというと。
「さて、お化けは死なない」
「試験も何にもない」
懐かしい歌を歌いながら楽しくやっていた。彼等は気楽だった。
学校の講義もトレーニングも終
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