第三十三話 闘争その十一
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「妖怪は化けられるんだよ」
「だからか」
「うん、全然平気」
また言う彼だった。
「砂かけ婆なんか砂使わないとわからいし」
「わしなんかあれじゃぞ」
今度言ってきたのは子泣き爺である。
「普通に今の格好をすればそいじょそこいらの爺さんじゃ」
「小柄なか」
「左様、それだけじゃ」
あくまでそれだけだというのだ。
「それで何なくじゃ」
「おいどんも包まれば反物ばい」
一反木綿はひらひらと飛びながら話す。
「塗り壁どんは姿を透明にすることができるばい」
「塗り壁ーーーーー」
「僕だって顔化けられるよ」
一つ目小僧は自分の顔をその両手で一旦覆う。それを外すとすぐに普通の男の子の顔になった。河童も同じであった。他の多くの妖怪達もだ。
「こうしてね」
「人間に化けられるから」
「ノープロブレムだよ」
「変化か」
牧村はそれを見てまた述べた。
「成程な。そういうことか」
「そうそう、それだけ」
「全然平気だから」
妖怪達は明るく話していく。
「安心していいよ」
「僕達についてはね」
「勿論このままの姿で出歩いたりもするけれど」
それもあるというのだった。
「けれどね。人間の世界って隠れる場所凄く多いからね」
「誰にも気付かれずに歩くなんてね」
「楽勝だよね」
「本当にね」
それもできるというのだ。
「だから牧村さん僕達のことわかってないよ」
「そんなの楽だから」
「全然できるから」
「そうか」
そこまで聞いて頷く牧村だった。
「それでか」
「そうだよ。それじゃあこれ」
「食べる?」
「美味しいよ」
言いながら饅頭を出して来た。ここで狸や狐が言う。
「馬のうんこじゃないからね」
「安心していいよ」
「若しそんなものを出せば殴り倒すかもな」
牧村にしては珍しい冗談だった。
「それこそな」
「剣呑な冗談だね」
「っていうか本気?」
「本気じゃないよね」
「俺は暴力は嫌いだ」
これが返答だった。
「何も生み出しはしない」
「それはそうだけれどね」
「さっき話した暴力教師じゃあるまいし」
「暴力で手に入れたものなんて何にもなりはしないしね」
「続かないし」
妖怪達はこうも言うのだった。
「所詮はね。暴力だけじゃ人はついて来ないからね」
「人だけじゃなく妖怪もね」
「大事なのは中身」
このことは彼等も実によくわかっていた。
「中身がない人間は駄目だからね」
「まあさっきの暴力教師の話だけれど」
「その屑野郎?」
「そいつのこと?」
「そう、そいつ」
まさに彼のことだというのである。
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