第三十三話 闘争その十
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「それで街を歩けばまずいじゃろ」
「普通に歩いてるけれどね」
「ねえ」
「楽勝だよ」
猫又にから傘、それと一本だたらの言葉だ。
「一本足でも尻尾が二本あっても」
「傘でもね」
「全然目立たないよ」
「普通目立って仕方ないが」
これは牧村の言葉だった。
「尻尾が二本ある猫なぞな」
「だってさ。黙ってればわからないし」
「僕なんか独特なファッションで終わりだよ」
今言ったのは河童だ。河童巻きを楽しそうに食べている。
「もうそれだけでね」
「絶対に嘘だな」
「嫌だな、妖怪は嘘つかないよ」
「では思い込んでいるだけだ」
牧村の言葉も辛辣だ。
「その格好で目立たない筈がない」
「駄目じゃ駄目じゃ」
砂かけ婆がそんな牧村に対して言ってきた。
「やっぱり牧村さんはわし等のことを何一つとしてわかってはおらん」
「わかっていないというのか」
「そうじゃ、わかっておらん」
まだ言う砂かけ婆であった。
「わし等はこのままの格好でじゃ」
「外に出て平気だというのか」
「全くのう」
まさにそうだというのである。
「何の悩みも憂いもない」
「本当なのか」
「はい、本当ですよ」
ろく子がその首を伸ばしてきて答える。本当によく伸びる首である。
「私なんか黙っていればわかりませんよね」
「わかりやす過ぎる位だがな、今は」
「まあそれは置いておいてですね」
「置いていいのか」
「はい、首は縮めることができます」
言いながら今は伸ばしている。もう十メートルは伸びているがさらに伸びる。その伸び方はかなり尋常なものではなかった。それはまるで。
牧村もだ。その長さを見て言うのであった。
「何かな」
「何か?」
「いや、首長竜か」
彼が出してきた名前はこれだった。
「それみたいだと思ってな」
「首長竜ですか」
「そういう感じだ。何処まで伸びるのか」
それをまた言う。
「エラスモサウルスにも似ているな」
「うふふ、そうですね」
ろく子の方も笑ってそれに応えるのだった。
「私もあの恐竜には親近感がありますし」
「あるのか」
「もっとも私は縮めることもできますから」
言いながら引っ込めていく。すぐに普通の人間と全く違わないようになった。外見を見れば確かにそう見える。知的な美女にだ。
「こうした風に」
「そうか。そうなるか」
「はい、それでなのですが」
「何だ、今度は」
「私達は全然ばれません」
ばれないというのである。彼女もだ。
「傘さんなんて誰かが持っていればわかりません」
「昔の傘なのにか」
「だから。それは化けていればいいんだよ」
から傘が笑いながら話す。今は江戸時代の傘である。しかしというのだ。
実際にここでどろんと白い煙に包まれる。
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