第三十三話 闘争その一
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髑髏天使
第三十三話 闘争
牧村は博士の研究室にいた。そこでいつもの様に自分の机に座っている博士に問うた。言うまでもなく問うのはあのことであった。
「魔物か」
「そうだ。それはどうしてなるのだ?」
それを問うのであった。
「一体」
「闘いじゃな」
「闘いか」
「それじゃ」
まさにそうだというのであった。
「そのせいじゃ」
「闘いの結果か」
「魔物は闘いの中で生きる存在なのはもうわかっておるな」
「無論だ」
それについては異論のない牧村だった。
「よくわかっているつもりだ」
「そういうことじゃ。つまりじゃ」
「闘いを経ていればか」
「魔物に近くなっていくのじゃ」
「しかし髑髏天使はだ」
「過去君程短い間に智天使になったものはおらん」
これも話すのであった。牧村のことである。
「それもまたじゃ」
「それか」
「それだけ闘いを経ていることでもあるからじゃ」
「闘いを経ることで魔物に近付くか」
「実は今まで前例がない」
これが問題だった。
「当然文献にもない」
「文献にもか」
「髑髏天使が魔物になるか」
博士はここで腕を組んで大きく息を吐き出した。そのうえでの今の言葉であった。
「ううむ」
「わからないか」
「正直言ってわからん」
このことを正直に述べる博士だった。彼も己を偽ることはなかった。
「これだけ短い間に智天使になったのもないのじゃからな」
「前例がないからか」
「前例がないということはそこから調べて検証しなければならん」
これはどのことにも言えることであった。それはどうしてもであった。
「さて」
「さて?」
「さし当たってじゃがな」
「当面か」
「またもう一度闘ってみればよいかのう」
博士はこんなことを言うのであった。
「わしもこれはよくわからんが」
「わからないのか」
「のう」
博士は次に今日も部屋の中にはべって遊んでいる妖怪達に顔をやった。そのうえで彼等に対して問うたのであった。
「今彼はどうじゃ?」
「牧村さんが?」
「どうかって?」
「魔物に近くなっておるか?」
このことを問うたのである。
「どうじゃ?そこは」
「そうだね。それはね」
「どうかなあ」
「少しだけれどなってるかな?」
「そうだよね」
妖怪達はまずは牧村をじっくりと見た。そのうえで述べたのであった。
「気がね。闘いの中で殺伐ともしてきている?」
「そうかもね」
「そのせいかな」
「そうした意味では魔物に近くなってるかな」
「そうよね」
それを話すのであった。
「何か今の感じって」
「不吉な感じがあるけれど」
「それでも弱いよ」
「あるのじゃな」
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