第三十二話 変貌その十四
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場合もあるんだよ」
「魔物を倒す髑髏天使でもか」
「過去にそうした話はなかったかな」
「なかった」
死神が目玉の言葉に答えたのだった。
「これまではだ」
「そうだったね。そもそもね」
「智天使になる髑髏天使も殆どいなかった」
「しかもこんな短期間にはね」
「特殊な場合には特別なことが起こるものだ」
死神はここでも冷静に述べた。
「だからこそだ」
「この場合の彼も?」
「有り得る。いや」
「いや?」
「このままどうなってもおかしくはない」
死神は牧村を見据え続けていた。そのうえでの言葉である。
そうしてだ。死神はまた牧村に告げた。
「今の貴様は人になるか魔物になるかの狭間にある」
「人と魔物のか」
「どうなるかは貴様次第だ」
そしてこんなことも言うのだった。
「貴様がどう心を持っていくかだ」
「魔物を倒す」
牧村の考えは今はこれ以外の何でもなかった。
「それだけだ」
「それが何の問題もないものだといいね」
目玉が彼に告げた言葉だった。
「本当にね」
「何の問題もか」
「僕は何だかんだで君のことが嫌いじゃないんだ」
これは目玉の本音であった。彼は今本音を言ったのである。
「君という人間はね」
「俺はか」
「無愛想だけれど努力家だしさりげなく優しさを見せるしね」
「俺は別にそんな人間ではないがな」
「だといいけれどね。それじゃあ」
「そうだな」
死神は目玉の言葉に応えた。
「もう行くか」
「そうだね。じゃあさ」
目玉がまた牧村に告げた。
「また会おうね。その時はね」
「俺が人間でいればか」
「それを願うよ。じゃあね」
こうして姿を消す死神と目玉だった。彼等はこれで去った。牧村は闘いが終わるとサイドカーに乗って家に戻りそのうえでトレーニングをあらためてはじめたのであった。だがその心には何時までも彼等の言葉が残っていたのだった。それは容易に消えるものではなかった。
第三十二話 完
2010・2・28
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