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髑髏天使
第三十二話 変貌その十二
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「これからもだ」
「生きるというのだな」
「如何にも」
 こう言って左手のサーベルを魔物に向けた。それで横から一閃せんとする。
 しかし魔物はここで素早く後ろに飛んでだ。その一閃をかわしてしまった。
「惜しいな」
「かわしたか」
「貴様は確かに強い」
 魔物もそれは認める。
「しかしだ」
「しかし?」
「俺もまた強いのだ」
 こう言うのである。
「そう簡単に倒れることはない」
「簡単にはか」
「そうだ。そして」
 今の言葉と共にであった。今度は下からであった。
「むっ!?」
「もう一人いることを忘れるな」
 土蜘蛛の声だった。
「俺をだ」
「そうだったな。貴様もいたのだったな」
「そしてだ」
 土蜘蛛の声がさらにしてきた。それと共にであった。
 あの赤い糸が来た。それで髑髏天使を捕らえようとする。
 しかし髑髏天使はそれを右に飛んでかわした。糸はただ宙を舞っただけであった。
「惜しいと言うべきか」
「残念を言うべきか」
「それではだ」
 髑髏天使は攻撃をかわしたうえでその右手の剣に光を込めた。そうしてその光を下にいる魔物に対して放ってみせたのである。
「神の光などと言うつもりはない」
「では何だというのだ?」
「闘いの光だ」
 それだというのである。
「それを受けるのだ」
「ふむ。それではだ」
 土蜘蛛は上を見上げていた。彼もまた冷静である。頭上から光が迫って来てもだ。至って落ち着いてそのうえで言葉を返してきたのだ。
 そのうえでその光を左に少し動いただけでかわしてしまった。光は橋のアスファルトを砕いた。だがそれだけで終わってしあったのだった。
「こちらも同じことをするだけだ」
「かわしたか」
「今度は俺が言おう」
 かわしたうえでの言葉であった。
「惜しいと言うべきか」
「そうかもな。だが」
「だが?」
「かわされたのは事実だ」
 髑髏天使はこのことを冷静に受け止めて判断にも入れていた。
「それはだ」
「受け入れているな」
「受け入れなくては生き残ることはできない」
 あくまで生き残ることを言うのであった。
「そして勝つこともな」
「成程な。その通りだ」
「そしてだ」
 前から鎌鼬がその鎌から鎌ィ足を放ってきた。それは後ろに左斜め上に飛んでかわした。
「今は敵は一人だけではない」
「全てわかっているか」
「その通りだ。そしてだ」
 羽ばたきながら両手のその剣を再び構えての言葉であった。
「俺もだ」
「貴様も?」
「やらせてもらう」
 今の言葉と共にであった。その目が。
 彼は気付いていなかった。目が変わったのだ。それは普段の彼の目ではなかった。
 それは空にいる魔物にも橋の上にいる魔物にも見えた。はっきりと見えたのである。

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