第三十二話 変貌その十
[8]前話 [2]次話
すると老人の後ろにだ。二体の魔物がそれぞれ左右に出て来たのである。
「では百目様」
「今回は我等が」
「頼みますね」
その魔物達に告げるのであった。
「ここは」
「有り難き御言葉」
「この時を待っていました」
「闘う時を」
「この時を」
こうそれぞれ言ってみせる彼等であった。
「では早速」
「はじめても宜しいですね」
「では」
「どうぞ」
老人も彼等にそれを許すのだった。温和な笑みは期待で笑っている笑みになっていた。その笑みでの言葉であった。
「お任せしますので」
「智天使になったとか」
「早いものだな」
魔物達は老人の後ろから出て来た。その姿は今はそれぞれ若者の姿をしている。違うといえばその目が赤く光っているかどうかだけであった。
しかしその赤い目を爛々と輝かせながらだ。魔物達は牧村に言ってきたのである。
「いいな、髑髏天使よ」
「これから貴様と楽しむ」
あえて楽しむと言ってみせたのは明らかであった。
「そして倒す」
「覚悟するのだ」
「楽しむか」
牧村もまたそこに反応を見せた。
「戦いを楽しむ。それが魔物だったな」
「如何にも」
「だからこそだ」
こう返す彼等だった。
「髑髏天使の姿になるがいい」
「すぐにだ」
「わかっている」
髑髏天使もその言葉を受けてであった。
すぐに両手を拳にした。そうして。
それを胸の前で中指のところで打ち合わせる。するとその打ち合ったところから白い光が放たれた。彼はその光の中で姿を変えた。
そうしてその異形の姿になるのであった。髑髏天使の姿になったのだ。
「行くぞ」
右手を肘を曲げて前に出して一旦開いてから握り締める。そのうえで言うのであった。
そして魔物達もだ。その姿を変えてきた。
人間の姿から徐々に変わる。その正体は。
一人は前足が両方とも鎌になった鼬だ。そしてもう一人は巨大な蜘蛛だ。それぞれそうした姿になってみせてきたのであった。
「さて、それではだ」
「我等の名前はだ」
「言われずともわかる」
こう返す髑髏天使だった。
「そうか、既にか」
「わかるというのだな」
「それは」
「鎌鼬と土蜘蛛だな」
こう言ってみせたのである。
「そうだな」
「如何にも」
「その通りだ」
魔物達もその通りだと答えるのだった。
「我等の名前はそれだ」
「知っていたのか」
「かつては妖怪だった」
髑髏天使はまた述べた。
「しかし今はだ」
「その通りだ。こうして魔物になった」
「今はな」
その通りだと彼にも返すのだった。
「戦いに喜びを感じてだ」
「こうなっている」
「戦いに喜びか」
髑髏天使は魔物達のその言葉を聞いて静かに言うのだった。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ