第三十二話 変貌その九
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「じゃあな」
「ええ、じゃあね」
こう話をして別れてだった。この日はゆっくりと休んだ。
そして朝だ。トレーニングに出ようとする。しかしだった。
「貴様か」
「おはようございます」
老人だった。彼が玄関のところに立っていたのだ。
「お迎えにあがりました」
「家の前で待っていたな」
「いえ、今来たばかりです」
老人は温和な笑みと共に語った。
「たった今です」
「この時間に出て来るのはわかっていたな」
「それはその通りです」
そうだというのだ。
「では。宜しいでしょうか」
「断るつもりはない」
牧村は鋭い目になって言葉を返した。
「行くか」
「では場所はどちらに」
「好きな場所にしろ」
「こちらで場所を選んでいいのですね」
「それで何処にするつもりだ」
「はい、それではです」
牧村の言葉を受けてであった。老人は言った。
「御案内します」
「そうか」
「ではサイドカーに乗られますか?」
「そうだな」
言うとだった。早速二人の間にそのサイドカーが来た。その側車にはヘルメットがもうあった。
それを取り中に乗る。そこで。
「貴様も乗るか」
「私にですか」
「そうだ。乗るか」
老人を同乗に誘ったのである。
「行く場所は同じだからな」
「いえ、それは遠慮させてもらいます」
しかしここで彼は微笑みと共にそれは断るのだった。
「それは」
「いいのか」
「はい。お気遣いなく」
こうも言うのであった。
「私は歩いていけますので」
「歩いてか」
「そうしたものも嫌いではありませんが」
ここでこんなことも言うのであった。
「しかしです」
「遠慮するというのだな」
「では参りましょう」
こうしてだった。老人はバイクに乗る牧村を案内した。歩いているだけだがそれでもバイクの彼と同じ速さであった。その速さで向かった場所は。
そこは橋だった。牧村がかつて烏男と闘ったその場所だ。そこに案内されたのである。
「ここか」
「懐かしい場所と思いますが」
「その通りだ」
ヘルメットを脱ぎながら老人の言葉に応える。
「かなり前のことに感じる」
「あの時貴方はまだ天使でしたね」
「そうだったな」
「しかし今は智天使です」
変わったものだと。老人は彼に話してきた。
「凄いものです」
「変わったと言われることが多くなった」
「ええ。それも」
「それも?」
「望む方に」
こう言ってであった。サイドカーから降りる牧村を見ていた。その一見温和だが目の奥に何かを含んだ顔でだ。言ってみせたのである。
「なりそうですね」
「貴様がどう考えているかは知らない」
牧村はサイドカーから完全に降りて話す。
「しかしだ」
「闘われますね」
「来い」
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