第三十二話 変貌その六
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今度は投げると色がつくボールにブザー、それと特殊警棒まで持っている。次から次に色々なものを出してみせるのである。
「ここまであるから」
「大丈夫なのか」
「それに用心して」
さらにであった。
「係りの人のすぐ側にいるから」
「あっ、それいいわね」
それまで暫く黙っていた若奈もそれには賛成した。
「それだとそうそう声もかけられないしね」
「そうよ。それでどうかしら」
「まあそれならいいか」
牧村も妹の想像以上の深い思慮と用意周到さに内心脱帽していはいた。
「そこまであるのならな」
「合格ね」
「しかし御前は」
「何?」
「何時の間にそれだけ持っていた」
こう言うのだった。
「警棒まで」
「何言ってるのよ、お母さんが持つように言ってたじゃない」
「母さんがか」
「そうよ。私が可愛いから」
「それは聞いていないが」
「それも言ったの」
これも本当のことだがそれでもかなり派手に言うのだった。
「お母さんはね」
「相変わらず甘やかし過ぎだ」
「何かあったら自分の身は自分で守るしかないからって」
「ボールやスタンガンもか」
「ボールは自分で買って」
それは彼女の用意だという。
「お父さんはスタンガンよ。渡してくれた理由はね」
「父さんもか」
「そうよ。あとブザーは」
それについても話す。
「家にあるのを使ってるのよ」
「何かあったらそういうもので全部か」
「逃げてみせるわ。何があってもね」
「逃げるというより倒すだな」
牧村はここまで話を聞いて述べた。
「そこまでいくとだ」
「そうかしら」
「とにかくそこまであれば大丈夫だな」
太鼓判を押しはした。
「流石にな」
「そうでしょ」
「しかし御前もだ」
だがあらためて妹に言いはした。
「どうもな」
「何、今度は」
「顔の割には危険だな」
こう言うのだった。
「そこまで持っているとはな」
「だから。自分は自分で守らないと」
「身体を鍛えることはしないのか」
「してるわよ」
今の言葉にもはっきりと返したのだった。
「ちゃんとね」
「新体操か」
「新体操だったな。そうだったな」
「どれだけ強いかはわかってるわよね」
「一応はな」
わかっていると返す兄だった。
「全身を使う。しかも身体は柔軟だ」
「だから凄いのよ」
「しかし身体は大きくならないのだったな」
「まあそれは人それぞれっていうか体操じゃない」
未久はそれは少し突っ込みを入れた。
「また違うわよ」
「そうだったか」
「体操は身体全体を激しく使うから身体の成長がかえって止まるのよ」
あまり激しいスポーツも発育に影響するというのである。
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