第三十二話 変貌その五
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「それでわかったわね」
「選択肢はないな」
「一個だけあるわよ」
あるにはあるというのだった。
「聞きたい?」
「イエスだな」
「そうよ、それだけよ」
「それはないというんだ」
もっともな返答だった。
「全く。何という奴だ」
「いいじゃない、たまには」
口は今回は妹の方が上だった。
「こうして外に出ることだって少ないんだし」
「あら、それは違うけれど」
未久の今の言葉にはすぐに若奈が言ってきた。
「私大学じゃいつも牧村君と」
「あっ、そうじゃなくてですね」
「そうじゃなくて?」
「とにかくですね」
そのまま言葉を続けるのだった。
「たまにはいいじゃないですか」
「御前がだな」
「そうよ」
兄の言葉にまた居直ってみせたのだった。
「いいじゃない。そうでしょ?」
「まあいいか」
「そう、いいのよ」
ここでも強引だった。
「わかったわね」
「それで今度は何がいいんだ?」
「何がって?」
「何処に行くつもりだ」
こう問うのだった。
「今度は」
「そうね。今度はね」
未久は考える顔になってから述べた。
「ジェットコースターに行きたいわ」
「ジェットコースターか」
「それでね」
にこにこしながら兄と、そして若奈にも話してきたのであった。
「二人で行って来て」
「何っ?」
「何っ、じゃないわよ」
またにこりと笑って兄に言葉を返す。
「何っ、じゃ」
「二人でか」
「そうよ。お兄ちゃんと若奈さん」
その二人だというのだ。
「二人で行って来たらいいわ。私は下で待ってるから」
「馬鹿を言え」
だが兄はすぐに言葉を返した。
「そんなことができるか」
「できるかって?」
「御前一人を置いていけるか」
こう言うのである。
「御前も来い」
「そう言う理由は?」
「誘拐されたり迷子にされたらどうする」
それを言うのだった。
「一人になったらどうなるかわからないんだぞ」
「それは大丈夫よ」
しかし未久はあっけらかんとして話すのだった。
「それはね」
「大丈夫だというのか」
「そうよ、大丈夫よ」
そうだというのだ。
「だってこれがあるし」
「それか」
「これと」
スタンガンを見せてそれで終わりではなかった。
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