第三十二話 変貌その四
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「何かって何よ」
「三人か」
彼が言うのはこのことだった。
「それがどうもな」
「そんなにおかしいかしら」
「普通は二人じゃないのか」
兄が言うのはこういうことだった。
「そうじゃないのか」
「そうかも知れないわね」
兄の言葉にこう返す妹だった。
「言われてみれば」
「何かおかしな言葉だな」
「そう?お兄ちゃんの気のせいでしょ」
「気のせいだというのか」
「だって。デートじゃないんだし」
そしてこんなことを言うのであった。
「今回は慰労よ」
「慰労か」
「だから。私達がいつもお兄ちゃんの世話をしているから」
「俺の世話をか。御前がか」
「そうじゃない。だからこうして連れて来てもらってるのよ」
実にぞんざいな態度での言葉だった。
「これでわかってくれたかしら」
「その説明でわかれという方が無理だと思うがな」
牧村は憮然とした声で妹のその言葉に返した。
「大体御前が俺に何かしたか」
「してるじゃない」
「迷惑をかけることをか?」
「だからお世話をよ」
それをだとあくまで言うのだった。
「ちゃんとね」
「記憶にはないがな」
「記憶にないのはお兄ちゃんの気のせいよ」
未久も引かない。自分勝手な分だけ。
「全く。いつもこんな可愛い妹が傍にいるだけでもね」
「今回も連れて行けと無理を行ったな」
「だから。私達の慰労じゃない」
強引な主張は続く。
「私と若奈さんのね」
「私は別に」
若奈は少しきょとんとした顔で述べた。
「何も言ってないけれど」
「若奈にも随分強く言ったそうだな」
牧村はまた妹に問うた。
「何かな」
「一緒に来てくれって言ってたのは確かよ」
若奈の方もこう言うのだった。
「それはね」
「やはりな」
「まあ私としては」
ここで微笑んで話す若奈だった。そしてその言葉は。
「嬉しいけれどね」
「嬉しいのか」
「だってテーマパークなんて久し振りだし」
満面の笑みでの言葉であった。
「だからね。渡りに船だったわ」
「そう思ってお誘いしたんですよ」
また笑いながら話す未久だった。
「若奈さんもね」
「有り難う、未久ちゃん」
「どういたしまして」
にこやかに笑い合って話す二人だった。ここでは牧村は疎外されている。
「では今日は」
「楽しみましょう」
「お兄ちゃんはエスコートするのよ」
兄に向ける顔と声はきついものだった。
「いいわね」
「俺はエスコートか」
「そうよ」
まさにそれだというのである。
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