第三十二話 変貌その三
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「こうした世界もだ」
「人間の世界もだよね」
「元々魔物は人間は喰らいはするがだ」
「他に美味いものがあればどうでもいいさ」
今言ったのはロッカーだった。
「何せ筋ばっているわ食うところは少ないわだからな」
「はっきり言ってまずいわね」
美女も素っ気無い。
「猿と同じだわ」
「確かにな。下は同じだからな」
今言ったのは大男である。
「それはな」
「そうなのよね。猿は嫌いよ」
美女は今度は忌々しげな口調だった。
「人間もその味はね」
「今は他に幾らでも食べるものがありますね」
小男も述べる。
「人間達の世界にそれが溢れ返っています」
「それでどうして人間を食べるのか」
女も言ってきた。
「必然性はないわ」
「人間よりも牛や豚の方が美味い」
そして男もそれは同じだった。
「そちらの方がふんだんにある時代だしな」
「その通りですね。私にしてもです」
老人も温和な笑みのままにこやかに語っている。
「人間の肉にはもう全く興味がありません」
「それどころかさ。ここでずっと遊びたいよ」
子供の本音はやはりこれであった。
「ねえ百目」
「はい」
「今度は何処に行こうかな」
「メリーゴーランドはどうでしょうか」
老人は彼にそれを勧めるのだった。
「ここは」
「メリーゴーランドなんだ」
「お嫌いですか?」
「ううん」
その問いには微笑んで首を横に振った子供だった。
「好きだよ、それもね」
「では決まりですね。メリーゴーランドです」
やはりそれだというのだ。
「それに乗りましょう」
「ジェットコースターはどうかな」
「私はそれがいいな」
紳士の言葉である。
「あれが一番好きだ」
「そうね。私もね」
そしてそれは美女も同じであった。
「あれはいいものね」
「ではそれか」
紳士はまた言った。
「それに乗るか」
「そうしましょう」
「皆さんそれぞれのものを楽しまれればいいかと」
ここでまた老人は同胞達に温和な笑みと共に告げた。
「では。今回は私が」
「そういうことでだ」
「御願いね」
こんなやり取りをしながら人間の娯楽を楽しむ彼等だった。そして牧村もまた。この遊園地に未久、そして若奈と共にいた。三人であちこちを回っていた。
「たまにはよ。トレーニングの合間にね」
「遊ぶといいというのだな」
「そういうことよ」
軽やかなクリーム色のズボンにパーカーのある上着の若奈がにこやかな顔をしていた。
「だからこうしてね」
「しかしだ」
だがここで牧村はふと言うのだった。
「何かな」
「何かって?」
隣のデニムのミニに青いジャケットの未久が兄に問うた。
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