第三十一話 赤眼その二十八
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「ねえ」
「今度は何だ」
「何か食べない?」
こう言ってきたのである。
「お腹空いたから」
「何かか」
「果物か何かね」
そうしたものをというのだ。
「食べない?いい?」
「そうだな。林檎があったな」
「じゃあ切るわね」
「御前が切るのか」
「そうよ」
まさにその通りだという返事だった。
「駄目?それで」
「御前が切るのか」
ゲームの画面を見ながらの言葉だった。彼女の方は見てはいない。
「包丁使えるのか」
「あのね、私だって女の子よ」
兄の今の言葉にはかなり露骨に反感を見せたのだった。
「それで使えない筈がないでしょ」
「自分も人も刺さないようにな」
「お兄ちゃんを刺すかもね」
いささか剣呑な目での言葉だった。
「何時かね」
「俺をか」
「女の子に対して失礼なこと言うからよ」
憮然とした顔での言葉である。
「全く。よく若奈さんも付き合ってあげてるわよ」
「それがどうかしたのか」
「だから。何で若奈さんと付き合ってるの?」
目を三角にさせての言葉だった。
「お兄ちゃんが」
「不思議なのか」
「不思議も何も怪奇現象よ」
こうまで言うのだった。
「全く。あんな綺麗で優しい人がよ」
「綺麗で優しいのは確かだな」
「何でそういう人がお兄ちゃんと?」
今度は腕を組み考える顔になっていた。
「それが凄くわからないままだし。ただ」
「ただ。何だ?」
「若奈さんだったらいいわね」
一転してにこやかな顔になる妹だった。
「それはね」
「いいのか」
「私の義姉さんになるのよね」
かなり飛躍した考えだった。しかし彼女の中ではそれはもう半ば現実のものになっている話だった。そしてそれを言葉に出していたのである。
「それはね」
「随分とかなり飛躍しているな」
「けれど結婚とか考えてる?」
「考えたこともない」
それは全く、であった。
「何でそんなことが考えられる」
「私は考えたことあるわよ」
「何っ?」
「だから。あるのよ」
こう話すのである。
「それはあるのよ」
「中学生で結婚か」
「女の子は十六歳で結婚できるじゃない」
法律上の話である。若奈はまだ中学生であるが年齢的には結婚が近くなってくる頃なのだ。この辺りは微妙なところもある話であった。
「だからね」
「御前が結婚か」
「それで子供はね」
楽しそうに笑いながらの話だった。
「三人がいいわね」
「三人か」
「それか五人か」
結構子沢山が好きなようである。
「大勢欲しいわね」
「本当に話が飛躍しているな」
「そうかしら。女の子だったら皆そう思うわよ」
彼女が言うにはそうらしい。
「だって。赤ちゃん産めるのって女の子だけじゃない」
「男ができたら怖い
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ