第三十一話 赤眼その二十二
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「そうか、見事か」
「並の魔物なら倒せる」
今の攻撃で、というのだった。
「だがわしはだ」
「普通の魔物ではないというのだな」
「わしはイル」
「名前を聞いてはいないが」
「だが言っておく」
そうするというのだ。
「この名前を覚えておくのだ」
「覚えるつもりはない」
死神のところに先程の鎌が戻って来た。彼はそれを右手で受けた。凄まじい衝撃を片手で受けてだ。そのうえでまた言ってみせたのである。
「これまではそうだった」
「では今はか」
「気が変わった」
これが今の彼の返答だった。
「その名前覚えておこう」
「わしは空では負けたことがない」
その言葉には絶対の自信がこもっていた。
「一度もだ」
「空ではか」
「そうだ、それはない」
その自信と共の言葉だった。
「このことは告げておく」
「その言葉も覚えておく」
そしてこう返した死神だった。再びその鎌を両手に持っている。そうしてそのうえでまた言うのだった。声は鎌と共に鋭いものとなっていた。
「貴様の名前と共にな」
「そうか」
「では来るのだ」
魔物を見据えながらの言葉である。
「貴様の攻撃を見せてもらおう」
「ではだ」
するとだった。魔物が幾つにも分かれてきた。それは。
「分け身か」
「これを使えるのは死神、貴殿だけではないのだ」
「魔物も使えるとな」
「そしてだ」
さらにであった。今度はその右手を死神に向けて突き出してきたのだ。
そこから雷を放ってきた。それで死神を撃つ。
死神はその雷を姿を消してかわした。そのうえですぐ左に出てみせたのである。
そうしたうえでだ。また言ってみせた。
「貴様の技はそれか」
「左様、雷を使う」
まさにその通りだというのである。
「こうしてだ」
「大体わかった」
「わかったというのだな」
「貴様のことはな」
言葉は笑ってはいなかった。その手にしている鎌の輝きそのものだった。その言葉を魔物に対して告げて見せたのである。それが今の彼だった。
「よくわかった」
「そうか。それは何よりだ」
「そしてだ」
その言葉をさらに続けるのだった。
「わかれば造作もないことだ」
「それで勝てるというのか」
「貴様が分け身を使うのならばだ」
鎌を両手に持ち構えたままでの言葉だった。
「私もだ」
「むっ!?」
「同じ技を使うまでだ」
こう言って身体を分けてきた。彼もまた分身を使ったのだ。
七人になった。その七人の口でそれぞれ言うのであった。
「こうしてだ」
「闘う」
「貴様とだ」
「ふむ。さすれば」
「わしもまた」
「増えるとしよう」
そして魔物もそれぞれの口で応えてきた。そうしてだった。
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