第三十一話 赤眼その十三
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「どうかしら、それで」
「いいと思う。では筋力トレーニングの後でだ」
「飲んで」
ここでは明るい声になる若奈だった。
「よかったらね」
「ああ、後でな」
「それで休憩してから」
それからのことも話す若奈だった。既にトレーニングのメニューやスケジュールについては完全に頭の中に入っていた。
そうしてだった。次に言うことはだ。
「フェシングの方ね」
「それだったな」
「まずはそれね」
次はそれだというのだ。
「フェシングの方の動きも凄くなってきたし」
「剣捌きがか」
「テニスだってフットワークがさらによくなったし」
「そしてさらによくなる為にはか」
「今度は食べ物よ」
まさにそれだというのである。
「食べ物をよくすればね」
「もっと違うか」
「そういうこと。牧村君もっともっとも強くなれるし」
フェシングの話である。
「上手になれるわよ」
「そうだな。食べ物もだが」
「ええ」
「それにだ」
ここで彼は話を変えてきた。
「今思っているが」
「今度は何なの?」
「トレーニングにだ」
こう話してきたのである。
「水泳を入れてみるか」
「水泳もなの」
「それはどうだ」
「水泳はちょっと違うわよ」
若奈はそれについては首を傾げさせて言うのだった。
「それはね」
「水泳は駄目か」
「駄目ではないわ」
そうではないというのである。しかし、であった。
「けれど」
「けれど。何だ」
「フェシングやテニスとまた求められる筋肉が違うし」
「違うか」
「水泳は水に浮かばないといけないじゃない」
これは前提であった。泳ぐからにはまず水に浮かばないとならない。そのまま沈むということは即ちカナヅチである。
「だからね。筋肉質だとかえって」
「駄目か」
「そうなのよ。フェシングもそうだし特にテニスは」
「やっていると筋肉だけになるな」
「浮かびにくいんじゃないかしら」
こう言うのである。
「だからそれはね」
「あまりしない方がいいか」
「ほら、黒人の人」
若奈は話に黒人を出してきた。
「黒人の水泳選手ってかなり少ないじゃない」
「色々なスポーツで活躍していても水泳だけはか」
「一説には人種差別もあったらしいけれど」
これは実際に言われていることである。黒人と同じ水の中には入られないというのである。そうした人種論もあったのである。今もこうした考えを持っている人間はいるのであろうが。
「それでも筋肉質だからね」
「水に浮かばないか」
「脂肪は軽くて筋肉は重いから」
これが前提としてあるのだった。
「だからね」
「それでか」
「どうかと思うわ」
また言う彼女だった。
「それはね」
「わかった。それではだ」
牧村はそこまで聞いて
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