第三十話 智天その二十四
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「確実にだ」
「では」
その声を聞いてすぐに返してきた魔物であった。
「どうされてですか?どうして私を倒すのでしょうか」
「受けるといい」
髑髏天使は身構えた。その両手の剣をだ。
そうして全身に力を溜めてだ。下から上に。
一気に飛んだ。跳んだのではなかった。
一陣の、それも光り輝く風となってだ。突っ切ったのであった。
勝負は一瞬であった。竜巻と光の風が交差し。
それで降り立ったのは。彼であった。
髑髏天使は降り立った。その背中で魔物は切り裂かれていた。その身体でかろうじて立っていた。既に青白い炎を発してきていた。
「この通りだ」
「わかりました」
背中合わせでの言葉に応える魔物であった。
「それもよく」
「勝負は一瞬でつく」
また言う髑髏天使であった。
「まさにだ」
「そうですね。ただ」
「ただ。何だ」
「それだけの力を持たれるとは」
最後の力で髑髏天使に顔を向けていた。髑髏天使もまた彼に顔を向けてきていた。
「最早それだけの力はです」
「どうだというのだ?」
「人ではありません」
「人ではか」
「そう、最早人ではありません」
言っているその間にもであった。魔物の身体は青白い炎に包まれていく。断末魔のその中でも声を発しているのであった。
「魔物。いや」
「いや、何だ?」
「神に近付こうとしていますね」
それだというのである。
「私達の神に」
「魔神にか」
「力はです」
そしてそれだけではないとも言うのであった。
「そして心も」
「心もか」
「そこまで闘いに迎えるその心」
「それがか」
「はい、まさに人ではなく」
「魔神か」
今度は髑髏天使から言ってみせた。
「それになろうとしているか」
「そうです。さて、では私は」
「死ぬのだな」
「では」
最後に一礼した。それもまた優雅な一礼であった。それをしてから。
彼は青白い炎に全身を包まれた。その中に静かに姿を消した。髑髏天使はそれを見届けてから姿を牧村のそれに戻した。しかしであった。
「そのままだな」
「何っ!?」
「目はそのままだな」
死神が彼の前に来ていた。そうしてそのうえで言ってきたのである。
「髑髏天使の時のままだな」
「何が言いたい」
「今言ったままだ」
髑髏天使を見据えての言葉である。
「貴様の目は闘いをしていた時そのままになっている」
「戯言だな。俺は決して」
「自分でそれを否定するのならいい」
それはいいという。
「だが。私が言ったことはだ」
「事実だというのか」
「そうだ。私は嘘は言わない」
「では見間違いだな」
「だとすればいいのだがな」
あくまでそうではないと言っていた。そのうえで牧村を見て告げてきているのであった。
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