SAO編
二十六話 罪は誰に?
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ていると言っても良い状況である以上、それは仕方がない事なのだけれども、やはり背中を流れる汗が不快である事に変わり無いように、裁判の結果を待つようなこの緊張もまた、心地よい物とは到底言えない。
「良いだろう。この報告書については私の方で今後の方針として幹部陣にも推奨しよう。私は彼と言う人物を知らないが、君の必死さを見る限り信用に足る人物の様だからね。退出してもらって構わない」
「!……有難うございます!」
十二分に良い判断を告げられ、アスナは満面の笑みを浮かべて自身の上司に深い礼をする。
そのまま身体を百八十度回転させ、部屋の扉に手をかけようとした所で、再び背中から声が投げかけられた。
「ちなみに、参考までにだが……何が君をそこまで必死にさせたのかな?」
純粋な興味として投げかけられたその問いに、アスナは緊張しながらも振り向かず答えた。
「一度約束を破った以上、二度目は無いと思ったからです」
「……そうか。引き止めてすまなかったね。」
「いえ。……失礼します」
扉を開き、外へ出る。
ゆっくりと扉を閉め、階段を下り、自身の個室に入ってから、アスナは扉に背中を預けてズルズルと床に座り込む。
「よかっ……たぁ……」
《ジン》……リョウへの対応が厳しい物とならなかった事に心の底から安堵する。
一度目の約束は、結果的に自分達の力不足で破る事になってしまった。二度目の約束は……これで、何とかひと山越えた事になるだろう。
それでもまだまだ先は長いが……
そんな事を思いつつ、アスナは小さくこぶしを握ってガッツポーズをし、ふと、約束したその時の事を思い出す……
────
その時も、アスナは座り込んでいた。
戦闘が終結し、その後の被害状況の確認等が各ギルド、ソロプレイヤー間で終了。
現地解散により戦闘に参加した各プレイヤーたちが己々自身の本拠地へと散っていく中、疲れ果て、座り込んでいたアスナだったが……ふと、洞窟の入口へと歩いてゆく人影の中に、何人かの哀しみをあらわにした者達が目に留まる。
報告では、此方にも死者が三名出た。
彼らはきっと、その内の誰かの友人達なのだろう。
しかし、本来あの状況では、この程度の犠牲で済まずともおかしくは無かった。
もしあの状況で、リョウが前へ出、敵の戦線を崩してくれていなかったら。そう考えるだけで、背筋に冷たい物が走る。
しかし、本当ならばあの状況にだけはしてはいけなかったのだ。
まして、自分はキリトにまで……少しだけ、泣きだしそうになりながら俯いていると、不意に背中から声がした。
「よぉ、一応戦勝したってのに浮かねぇ顔してんな。騎士姫さんよ」
「……アスナ……」
両方とも、聞き覚えのある声。
出来れば聞きたく無かった声。
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